研究課題/領域番号 |
25370310
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
田中 美保子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (30385380)
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研究分担者 |
鳥越 けい子 青山学院大学, 総合文化政策学部, 教授 (60237162)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Lucy M. Boston / サウンドスケープ(音風景) / コーパス分析 / グリーン・ノウ・シリーズ / ザ・マナー(ハウス) / 児童文学 / 音環境 / 音に関する語彙 |
研究実績の概要 |
L. Bostonの音響感覚に焦点をあてた考察をするため、文学研究とサウンドスケープ研究とが共同してL. Bostonの作品における聴覚的特性を考察し、それが彼女の文学において有する意義を4側面から考究している。 1.Lucy M. Boston の館と庭のサウンドスケープ研究:聞き取り調査記録(音声データ)をテキスト化し、そこから「音」に関するコメントを抽出し、表にまとめると共に音源種類別に分類した。 2. Lucy M. Bostonの音楽的嗜好の調査:現地に赴き収集した曲目リスト作成のための基礎資料をデジタル化した。 3. 文学作品の分析:a. 昨年度洗い出したグリーン・ノウ・シリーズ全6巻の本文テキストから「音」に関する記述・語句を表にまとめる作業。また、それを反映した音マップを完成。b. 作品世界の理解を深め、今後の研究の方向性をより明確にするべく、研究代表者渡英の折、V. Watson、D. Boston各氏と個別の打ち合わせと聞き取り。また、両氏とL. M. Bostonの作品世界に関して討議。c. 上記b.により、Bostonの文学作品のテクスト分析やイラストレーションと関連づけた分析、英文学史における作家Bostonを位置づけ評価する作業などが、依然、欠落したままの状態であることが確認された。これを埋めるべく、両氏に研究論文執筆の依頼。V. Watson氏は予定の2本のうち1本をすでに研究代表者に提出、2本目を現在執筆中、D. Boston氏も原稿サンプルを研究代表者に送付・相談後、現在執筆中。完成後は研究代表者が、各論文を日本語に訳し、順次、学内の紀要等に公表予定。 4. コーパスの作成:昨年度に引き続き行なってきた、Lucy M. Boston の全著作のコーパスを作成するためのテキストを電子データ化する作業を完了した。音の記述に関する呼応分析に入るためのスキャニング作業を終え、ロケーションを示すタグづけの約50%程度を遂行した。(タグづけは次年度に継続する。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、今年度中に、L. M. Boston の文学を支える外的要素の整理と分析を主として遂行し、また文学作品の分析を深めるための基礎的資料の作成を行った。V. Watson、D. Boston氏へのインタビューと両氏の研究協力を得られたことは、大きな収穫であった。 L. M. Boston の文学を支える外的要素(生活・芸術活動など)および内的要素(文学作品から音あるいは聴覚経験に関するもの)の抽出と、その分析作業の一部は来年度早い時期に遂行可能と目される。 よって、全体としては、(2)おおむね順調に進展している、という自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
この3年間の研究成果を整理し公表する作業に入ることを目指す。まとめていくにあたり主となる軸は、以下の6つである:1. L. M. Boston の館と庭・作品世界のサウンドスケープ、2. L. M. Bostonの音楽的嗜好、3. 作品(本文テキスト)における音に関する記述の特徴の分析論文の和訳、4. L. M. Bostonの文学世界全体像の論文執筆およびその和訳、5. 作品のコーパスの完成、6. 音の記述に関する呼応分析やクラスター分析結果などに関する考察。 上記遂行のために、今後も、引き続き、研究分担者や連携研究者とも密に連絡を取り合ことに加えて、渡英し、L. M. Boston の館(ザ・マナー)にあるレコード・カタログのデータとSeven Stories (New Castle)にあるBostonの書簡などの一次資料を入手する。合わせて、D. BostonとV. Watson両氏それぞれと面談し、論文の和訳時に発生した質問への回答や各種助言を受ける。 さらに、研究途中の成果報告会を公開で行なう。これにより、共同研究者や研究協力者相互の成果を共有し、シンポジスト相互や聴衆から寄せられた意見を参考にして、本研究の質の向上を図る。具体的には、2015年12月5日(土)に、東京女子大学に於いて、研究大会「Boston Conference」を開催する計画である。当日は、研究者や研究助手たちによる成果報告に加え、L. M. Bostonの館にかつて寄宿していた研究協力者、林望(作家)氏とその妻の林とも子氏が、L. M. Bostonおよび館の音風景について語る予定である。研究員各自は、当日の発表内容を論文として公表するほか、林夫妻の講演は講演録として研究報告書に含める。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2つの理由による。1.実行可能であれば、成果の中間報告の学会や招待講演会などを開催することを目論んでいたため、そのための費用を計上していたが、実際には実行を次年度に見送ることにしたため。2.調査のための渡航費用を計上していたが、実際には、航空運賃に関して大学の助成を受けることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の2つに主として充てる予定である。1.学会開催:今年度12月に、成果の中間報告として学会開催をすでに計画している。その運営費用および、講師謝礼にあてる。また、調査のために現地(イギリス)に渡航する必要がある。この2つの目的のために主として充てる予定である。2.調査のための研究者および助手の渡航関係の費用に充てる。
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