平成27年度は、Anancy Storiesの受容のスタイル、その特色と効果、受容に関する作者の意図等に関して比較分析を行うとした研究実施計画に基づき、論文の執筆と国際学会での研究発表を行った。 2015年7月2日、イギリス・バーミンガムのThe Drum Intercultural Arts Centreで開催されたThe 39th Annual Conference of the Society for Caribbean Studiesにて "Anancy's Creative Web: The Influence of Creole Folktakes on Erna Brodber's Jane and Louisa Will Soon Come Home"というタイトルで学会発表を行った。特に、古事記や浮世絵、歌舞伎や能にも登場する妖怪であり反体制の逆賊の表象でもある日本の「土蜘蛛」とアフリカの神話に端を発するカリブ海地域の民話、変幻自在のトリックスター、アナンシー(半神半人のクモの化身)との社会的、文脈における表象比較からはじめ、クレオールの民話に秘められた語りの芸術の系譜を引き継ぐブロッドバーのポリフォニックな語りの手法、植民地主義への抵抗の文脈を読み解いた。発表は、世界各国の研究者から好評を得た。 また、2016年度中に出版予定の本『衣装のアメリカ文学(仮題)』(金星堂)に収録予定の論文「イギリスのなかのカリブ―ポーリン・メルヴィル作品にみる偽装と衣装」を執筆した。Pauline Melvilleの短編集Shape-shifter(1990)の中の"The Truth in the Clothes"を中心に、テクストの中に潜むAnancy Storiesの影響とそれをいかにメルヴィルがアレンジを加え、新たな創造性を生み出しているかについて論じた。
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