本研究をとおしてわたしは、19世紀後半から20世紀前半にかけてのイギリス小説に頻出する心霊現象のモチーフ(死者の霊との交信、幽霊現象、テレパシー、千里眼、読心術、催眠術など)に着目しながら、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』を同時代の心霊主義と心霊研究との学際的関連のなかで読解した。 また、超自然的なものに対するこの時代の態度を、心霊主義、心霊研究、科学的自然主義という三つの側面から総合的に研究し、心霊現象がこの時代にもっていた思想的意味を確認するとともに、最終的に『ドラキュラ』に関する新しい解釈を提示しようとした。
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