研究課題
基盤研究(C)
今年度は18世紀末からヴィクトリア朝前までの産業革命の進展に関するデータの抽出・整理を行った。トレヴェリアン、ウィリアムソンらの研究により、産業革命の開始時期、革命の結果起こった事象、産業革命が果たした役割についてはかなり知れ渡っている。しかし、すでに古典となっているトレヴェリアンの著作は主なものが1940年代に刊行されており、今もって示唆的なのであるが、イギリス経済や歴史、そして産業革命に関する新しい研究書が陸続と刊行されている現在、時代が古くなってきたことは否めない。そこで、ウィリアムソン、プライスなどの新しい著作を読み、知識を増やした。新しい研究書とともに読んだ古典的著作はウィリアム・コベットの代表作『田園騎行』(1830)である。コベットは急進派のジャーナリストとして知られているが、その著作については従来看過されてきた。『田園騎行』はコベットが囲い込み後で人口が減り、衰退の一途をたどるイングランドの農村を実地に調査した記録である。このテクストには、農村からの人口流出、国債を購入し、額に汗せず不労所得を得る富裕層と低賃金で搾取される農民の格差が明確に書かれており、ヴィクトリア朝の富裕層と貧困層を端的に形容する「二つの国民」の原型を見た。「二つの国民」というキーワードがあてはまる作家の一人がギャスケルだ。そこで、2012年度の学会発表に加筆し、「メアリ・バートン」(1848)、「北と南」(1854-55)の雇用者と労働者階級の格差について論文を作成した。さらに、平成26年7月にディケンズ『リトル・ドリット』(1855-57)の刑務所について国際学会発表することになった。
2: おおむね順調に進展している
当初はオースティンの作品を中心にする予定だったが、ギャスケルとディケンズ作品を別の視点から読み、知見を広げることができた。特にディケンズは国際学会応募要旨を作ることによって、テクストを精査することができた。
まずは、7月の国際学会発表の準備をすることによって、ディケンズのテクストを精読し、今までになかった理解をする方針である。学会発表は各国の研究者のレビューを受けることによって、論文として発表する予定である。産業革命の原動力となったのは海外植民地である。ヴィクトリア朝の植民地と比較するため、20世紀の作家、例えばグレアム・グリーンの作品なども読み、植民地がイギリス発展に果たした役割を考える。
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国際教養学部論叢
巻: 6 ページ: 1-13
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