研究課題/領域番号 |
25370317
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
武井 暁子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00403634)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 産業革命 |
研究実績の概要 |
当該年度の課題は都市化に関するフィクションとノンフィクションの記述の発掘であった。ノンフィクションについては、ケイ=シャトルワース『マンチェスターの綿紡績産業に従事する労働者階級の道徳と健康状態』(1832)、チャドウィック『イギリスの労働人口の衛生状態に関する報告書』(1842)、エンゲルス『イングランドにおける労働者階級の状態』(1845)などを精読した。フィクションについては、ディケンズ、ギャスケル、ブロンテ、G・エリオット、ハーディの作品を中心に都市化現象がどのように書かれているかを考察した。特に、ディケンズについては、7月にフランスで開催されたDickens Societyの年次大会で産業革命の恩恵にあずかった者とあずかれなかった者の格差を『リトル・ドリット』の監獄をモチーフに論じた。 上記に加えて、産業革命の発展の中心となった海外植民地の役割に注目した。対象を20世紀まで広げ、グレアム・グリーンの『事件の核心』(1948)の植民地における警察の役割をディケンズやドイルのものと比較考察した。こちらは平成27年度刊行の共著に掲載決定した。 以上と並行して、ヴィクトリア朝の事象を日本の平均的学生に教えることの意義と問題点を1月にハワイで開催された国際学会で発表した。日本の学生にヴィクトリア朝文学を教える場合の困難さは言語の差異、歴史知識の不足、当時の生活や文化を理解するのが難しい、学生自身の関心不足が原因との趣旨である。発表要旨は学会プロシーディングスに掲載された。 平成27年7月にDickens Societyの国際学会で産業革命期の飲酒について発表を行うことになった。 9月1日から10日までニューヨークに出張し、資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テキストに事前知識があるため、理解がスムーズであった。2度の国際学会発表準備のため、発表テーマに沿って研究成果を整理できた。研究の過程で20世紀まで関心が広がり、それまで研究対象外だったグリーンの作品研究ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は階級問題に関する論考の精読と知識の積み上げを行う。 これに関しては、定評のある研究書が多く、また新しい研究書が途切れることなく刊行されているので、新たな知識を得る手段は数多くある。ただし、論考をより正確に説得力あるものにするためには一次資料が必須である。選択肢としては当時刊行の料理本、礼儀作法の指南書、マナーブックなどを考えている。 フィクションとしては、引き続き、ディケンズ、ギャスケル、ブロンテ、G・エリオット、ハーディの作品を中心に読む。7月に国際学会発表があるため、階級と飲酒の問題について論じる。
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