研究課題/領域番号 |
25370318
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
栂 正行 中京大学, 国際教養学部, 教授 (10163958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アーナンド / ディケンズ / フォースター / 職業 |
研究概要 |
当該年度は、ムルク・ラジ・アーナンドの職業表象の研究を行った。アーナンド研究の出発点として代表作 Untouchable(1935)研究を行った。作品はトイレ 掃除人の一日を描いたもので、インドのカーストの問題の一面をわかりやすく読者に伝える。この作品に見られるアーナンドの基本的な職業表象のかたちおよび職業観の研究を起点に、 Coolie(1936) 、 The Village(1939)、Across the Black Waters(1939)、The Sword and the Sickle(1942)、The Private Life of Indian Prince(1953)などの作品研究も検討した。職業をタイト ルにする作品から、タイトルから職業が消えて行くプロセスに、アーナンドの職業観の変遷を追 った。アーナンドの経歴にはイギリス近代小説研究と密接に関係する点があ る。学部の学生としてロンドン大学ユニヴァシティ・コレッジで、さらに大学院の学生としてケ ンブリッジ大学で勉学した点だ。このころイギリスは、長いヴィクトリア朝から解放されつつも第一次大戦を経験し、激動の最中にあった。アーナンドは当時ロンドンで文学・芸術愛好家集団のブルームズベリー・グループの人々と交 流をもった。なかでも当時からインド贔屓でつとに著名な Edward Morgan Forster と交流し、フ ォースターは後にアーナンドの出世作『不可触民バクハの一日』に序文を寄せることになる。ア ーナンドには「インドのチャールズ・ディケンズ」という呼称がある。ディケンズがロンドンの 下層階級や中産階級を克明にその作品に描きだしたのと同様、アーナンドもインドの貧しい人々 の生活を描き続けたからだ。ふたりの作家の作品には、ともに近代小説の職業表象という本研究 のテーマに取り込める研究材料が無数にあり、当該年度は、そうした共通点に着目し、インド英語作家のなかにあってアーナンドの占める位置を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定とおりに進行している。 ただし、作品は平易に見えるものの、日本の研究者から見て理解しがたいところがあるので、今後そのような点を考慮の上、慎重に研究を進めたい
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、アーナンド研究を進めると同時に、第二番目の課題作家であるナラヤン、第三番目の課題作家であるラジャ・ラオの作品精読を平行して行う。ナラヤンはしばし職業名を作品名として使用する点に着目、一方、パリを舞台とする作品を始め、やはくからインド国外に出たラオならではの、インドという場にとらわれぬ作品の研究に入る。
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次年度の研究費の使用計画 |
書籍購入の際、下三桁を予算額に一致できる当該分野の本がなかったため 26年度の書籍購入にあてる
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