研究課題/領域番号 |
25370320
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
廣田 園子 京都女子大学, 文学部, 教授 (30368550)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英文学 / モダニズム / インターテクスチュアリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、今日の文学・文化研究における最も重要な批評概念の一つであるインターテクスチュアリティを軸に、20世紀を代表する英国人作家ヴァージニア・ウルフの『ミセス・ダロウェイ』(1925)を巡るウルフ本人及び後世の作家たちによる「変奏」の各テクストの意義を検証することが目的である。 平成27年度における研究の中心は、『ジ・アワーズ』の中で作者が如何にポストモダニズム的パロディとは異なる形で「現代版クラリッサ」の一日を提示しているかを検証し、ウルフ、カニンガム、そして作中の人物リチャードという三人の作家に異なる形で「支配」されるクラリッサの映画版における表象についても取り上げた論文の完成にあり、本稿は『ヴァージニア・ウルフ研究』第32号に掲載された。また本研究の集大成として来年度に出版予定である単著書の完成に向けて、『ミセス・ダロウェイ』の萌芽である短編「ボンド・ストリートのミセス・ダロウェイ」(1923) に関する論考、更に1999年にアメリカ人作家ロビン・リッピンコットが発表した『ミセス・ダロウェイ』の後日談である『ミスター・ダロウェイ』に関する論考をそれぞれ纏めた。加えて、ウルフ以外のモダニズム作家による作品の現代版と言える諸テクストへの理解を深める過程で、特に評価の高い現代イギリス人作家ゼイディー・スミスがE. M. フォースターの『ハワーズ・エンド』を大胆に改変した作品『美について』についての書評を『図書新聞』に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に予定されていた『ミスター・ダロウェイ』に関する論考をはじめとする諸研究を順調に進めることができ、雑誌論文及び新聞書評を発表する過程で有意義な意見交換やフィードバックを得ることができた。但し3年間の研究の集大成となる単著書出版の予定がやや遅れ、平成28年度秋になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度秋に、『ミセス・ダロウェイ』の主人公クラリッサ・ダロウェイの、脇役としての誕生から長編小説のヒロインへと進化する軌跡、及び後世の作家たちによる様々な翻案及び改変の系譜を検証することで、文学史上においても稀有な一個のキャラクターの「転生」の意義を考察し、またその「転生」を可能としている本キャラクターのモダニティを分析することを目的とした、本研究の集大成となる単著書出版を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究の遂行に当初3年間を予定していたが、学術雑誌での論文掲載や学会でのシンポジウム発表が計画以上に増えた。そのため、文学研究者に留まらない幅広い読者に研究成果を公開するために目指していた単著書出版が遅れ、研究及び執筆にもう1年の期間延長が必要であることが判明した。
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次年度使用額の使用計画 |
単著書の完成に向けて、更なる研究資料及びデータ処理に必要な備品の購入、及び更なるリサーチ及び専門的知識・助言を得るための旅費の支出が予定される。
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