研究課題/領域番号 |
25370325
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
入子 文子 関西大学, アジア文化研究センター, 非常勤研究員 (80151695)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 『緋文字』 / ホーソーン / カトリック / ウィンスロップ / ニューイングランド |
研究概要 |
「ピューリタン作家」と言われてきた19世紀アメリカのナサニエル・ホーソーン(1804-64)のカトリックへの関心は、ある程度認知されるようになった。しかし、その研究はなお不十分である。特に17世紀ニューイングランドを舞台にした『緋文字』(1850)に登場するヘスターの進歩的自由思想とカトリック的言動は作家の生きた19世紀前半のニューイングランドの状況に触発された、ホーソーンの時代錯誤とみなされている。だが申請者はこれまでの研究から、ホーソーンは作品の背景をなす時代の歴史にほぼ立脚することを確認した。そこで17世紀前半のカトリック事情を、アメリカとヨーロッパ相互の文献・現地調査によって探り、図像学的手法も継続的に用いながら、『緋文字』にみるカトリシズムとその文化の考察を深化させる。 本研究はすでに第一歩を踏み出している。カトリック修道士への作家の好意的見解を論じた「『ある鐘の伝記』」を読む」(2009)、関西シェイクスピア研究会口頭発表(2011.6)及び論文「ホーソーンとカトリック」(2012)、N.ホーソーン協会シンポでの、17世紀前半のボストンでのカトリックとピューリタンとの交流に関する発表(2012.5)とその論文「『緋文字』をとりまく17世紀の海」(2013)、日本英文学会支部大会シンポ(2012.12)での、『緋文字』に登場する17世紀ウィンスロップとカトリックとの関係を論じる発表とプロシーディングス「『緋文字』のウィンスロップ」(2013)などである。これら基本的研究をもとに、今年度は1.パソコン環境を整え、2.未入手の基本図書を購入、3. 入手済み基本図書を読む一方、 4.8月22日~9月1日アメリカのセイラム、ボストン、コンコードで図書館、博物館で海洋文化と歴史に関する文献、図像を収集。5. 昔からの海港と河川の合流のさまを現地で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウィンスロップの初期の屋敷跡や、セイラムを中心とする水運のあり方を把握することにより、当時のウィンスロップの置かれた状況と心情を感じ取ることができた。しかし、フィリップス・ライブラリーでの資料収集が思うに任せなかった。従来セイラムのピーボディ博物館の直ぐ近くの歴史的建造物に入っていたこのアーカイヴは、2013年夏から近隣の町に仮移転していた。場所の確認に手間取り、しかも滞在ホテルからの往復には交通不便であったため、希望していた資料の殆どは閲覧できなかった。これは予想外の事であったが、それ以外では時間をかけて現地をつぶさに見て歩き、新たな発見に繋がった。次のステップへと計画は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度の基礎的全体的調査の結果、一応の準備が整ったので国内外で次のように研究を推進する。 1. Windows XPの危険性が取り沙汰される中、Windows7に買い換えてパソコン環境を整え、大学と自宅との情報交換を可能にする。 2. 17世紀イギリスのカトリック、及びヨーロッパ中世・ルネサンスの宗教運動事情について研究を進める。重要であるにもかかわらず、これまで時間的制約のために実現しなかったイギリスのオックスフォード大学とその付属施設、さらに西部の港を訪れ、時間をかけて歴史や図像資料の収集、現地調査に当たる。 3. 社会への還元として昨年立ち上げたホーソーン研究会で、ホーソーン作品の精読を通じて幅広い層の研究者を育成する試みを続ける。その成果を本年も『ホーソーン研究』に発表させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
フィリップス・ライブラリー移転に伴い、十分な閲覧・収集ができなかった為、文献使用料、コピー代等の予定額を使い切ることができなかった。 平成26年度は助言を依頼する国内のカトリック大学の神父への謝金や国内外の資料収集の出張旅費等に使用する。
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