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2015 年度 実績報告書

トシオ・モリ文学の全体像の構築とジャパニーズ・アメリカニズム研究の確立

研究課題

研究課題/領域番号 25370328
研究機関広島大学

研究代表者

田中 久男  広島大学, 文学研究科, 名誉教授 (30039135)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードトシオ・モリ / 日系二世作家 / 日系アメリカ文学 / アジア系アメリカ文学 / ジャパニーズ・アメリカニズム / トパーズ強制収容所 / 「ムラタ兄弟」 / 全米日系市民協会
研究実績の概要

カリフォルニア州オークランド出身のトシオ・モリ(1910-80)は、日系アメリカ文学のパイオニア作家として認知されているにもかかわらず、処女作の短編集『カリフォルニア州ヨコハマ町』(1949)、長編小説『広島から来た女』(1978)、二作目の短編集『ショーヴィニストその他の短篇』(1979)から作り出された一方的な作家像の影響もあって、正当な評価を受けてこなかった。つまり、人間の穏便な面を描く穏やかな作風の作家という偏ったイメージに影響されてきた。その不当な扱いを打破し修正するために、彼が1941年12月の太平洋戦争勃発によって送り込まれたユタ州トパーズ強制収容所での体験を基に創造した中編小説「ムラタ兄弟」(2000年出版の『終わらざるメッセージ――トシオ・モリ作品選集』に収録)や、その体験直前の苦境を扱った数編の短編を緻密に読み解き、そこにモリの作家としての深い洞察力と想像力をみることで、彼の文学の全体像の構築を試みた。その際、ユタ大学やカリフォルニア大学バークレー校等に収蔵されている、収容所内で刊行の文芸雑誌や新聞等の歴史的な資料や、書簡等の伝記資料を参照することができた。
次に、1970年代のアメリカ社会に台頭した新しいエスニシティ意識と連動した文化多元主義という先鋭なイデオロギーの浮上を視野に入れて、モリ文学が静かに主張する姿勢を、ジャパニーズ・アメリカニズム(Japanese Americanism)という概念で表現することを目指した。つまり、アメリカニズムを民主主義や自由等の国家的な価値観を標榜するナショナリズムの現れ方として認知した上で、多様性を認め合うポストモダニズムの時代にふさわしいエスニシティ重視の対抗的な文学的ヴィジョンとして、民族的ルーツを日本人とする文化的遺産や記憶を大切に継承する姿勢を打ち出すジャパニーズ・アメリカニズムを確立する道筋を提唱した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] アメリカ文学におけるリージョナリズム(2)2015

    • 著者名/発表者名
      田中久男
    • 雑誌名

      フォークナー

      巻: 17号 ページ: 148-159

  • [雑誌論文] トシオ・モリの「ムラタ兄弟」とトパーズ収容所での創作活動2015

    • 著者名/発表者名
      田中久男
    • 雑誌名

      中・四国アメリカ文学研究

      巻: 51号 ページ: 1-12

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2017-01-06  

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