カリフォルニア州オークランド出身のトシオ・モリ(1910-80)文学の全体像を構築するために、まず、第二次世界大戦中のトパーズ強制収容所体験を基に描いた死後出版の中編小説「ムラタ兄弟」や関連の短編を読み解くことによって、処女作『カリフォルニア州ヨコハマ町』(1949)等で出来上がった穏やかな作風の作家という偏ったイメージを修正した。次に、アメリカニズムを民主主義や自由等の国家的な価値観を標榜するナショナリズムの現れ方として容認した上で、多様性を認め合うポストモダニズムの時代にふさわしいエスニシティ重視の対抗的な文学的ヴィジョンとして、ジャパニーズ・アメリカニズムを確立する道筋を提唱した。
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