ミュアについては、ハイネからの精神的影響を加えて彼にとってのバラッドの意味を再考し、さらに「うたびとトマス」の模倣詩とスコットランドを題材とした詩の比較考察によって、彼の帰属意識のゆらぎとスコティッシュ・アイデンティティへの根本的懐疑を明らかにした。この考察は学位論文「スコットランドのバラッド詩とナショナル・アイデンティティ」中に含めた。 ブラウンについては、バラッド詩に登場する「詩人の声」に着目した。それは詩人の反資本主義や現代のスコットランド社会批判を表す手法であり、ブラウンのバラッド詩にはアイデンティティ探求を超えたモダニズム的傾向が示されていることをまとめているところである。
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