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2014 年度 実施状況報告書

ルーマニア・ドイツ語文学にみる二つの「過去の克服」―ナチズムと社会主義独裁―

研究課題

研究課題/領域番号 25370337
研究機関東北大学

研究代表者

藤田 恭子  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80241561)

研究分担者 鈴木 道男  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20187769)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードルーマニア / ドイツ / ホロコースト / ナチズム / 秘密警察 / チャウシェスク / 文化産業
研究実績の概要

本研究は、チェウシェスク体制崩壊直前から現在に至るルーマニア・ドイツ語文学の動向を整理し、同文学がナチズムと社会主義独裁という二つの「過去」とどのように向き合い、その「克服」を目指すなかで、どのような文学的表象を生み出しているのかを解明しようとするものである。
平成26年度は、前年度に引き続き、1)1980年代以降に発表された作品の収集と整理、および2)武装親衛隊を中心とするナチ組織や社会主義独裁体制下の秘密警察との関わりを扱ったテクストの分析を進めた。先行研究において長年タブー扱いだったドイツ系マイノリティとナチズムとの関わりについては、更なる関連資料収集と分析の必要性が前年度の過程で明らかとなったが、今年度はこの点に関する研究成果の一端を発表するとともに、オーストリア国立図書館での調査を続けた。研究協力者は現在、戦間期のドイツ系マイノリティによるナチズムへの傾斜を扱ったシュラットナーの小説の分析をも進めている。ルーマニアのシビウの文書館に保管されているシュラットナーの書簡や原稿の調査も、全治3か月の骨折と校務で出張が不可能となった研究分担者に代わり、研究代表者が実施した。その際、シュラットナー本人とも面談し、今後の研究協力体制を確立するとともに、研究協力者の疑問を作家本人に質すことができた。
研究代表者はミュラーやシュテファーニのテクストに関する分析を進めている。ドイツのミュンヘンでシュテファーニを訪問し、今後の資料提供や協力体制について相談し、確約を得た。この関係により、ドイツ国内で激しい様相を呈している「ルーマニア秘密警察への協力」をめぐる対立的言説や訴訟等に関わる一次資料確保が可能となる見通しである。またルーマニア独文学会会長の古稀記念論集にルーマニア・ドイツ語文学に関わる寄稿を行い、同学会やブカレスト大学外国語学部ドイツ文学科との協力関係を強化した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度、ドイツ系ルーマニア人のナチズム関与の歴史が先行研究でいかにタブーとされてきたのかを新たに認識し、追加で調査を行ったため予定より進行が遅れていたが、今年度はその調査も含めて順調に経過した。11月末に研究分担者が骨折し全治3か月となったことで予定していた海外出張を延期し、ルーマニアでの調査は研究代表者が代行する等のアクシデントが生じたが、十分な情報共有により支障はなかった。また作家のシュテファーニ氏やシュラットナー氏等本人からの資料や情報提供の体制を確立できたことは大きな成果であった。

今後の研究の推進方策

1)著作や資料の収集、2)作品分析を継続しつつ、3)ルーマニア出身のドイツ語作家や批評家、研究者間での「過去」に関わる意見の相違や相互の非難をめぐる状況に関わる情報の分析を進める。同時に、4)前項の事態に対するドイツ語圏読者層の理解と反応を考察し、まとめの議論を行う。
研究協力者はとりわけシュラットナーについて、ナチズムへの同調および秘密警察協力の過去を扱った二つの作品の分析とシビウで収集した未刊行資料の調査との突合せを行う。なお未刊行資料の調査は継続する。研究代表者はとりわけ秘密警察との過去を巡りシュテファーニや詩人のパスティオール(ミュラーの協力者)等を巻き込み複数の関係者間で展開された激しい非難の応酬について情報を分析し、作品世界との関わりについても考察し、議論を整理する。

次年度使用額が生じた理由

研究分担者は平成26年12月にオーストリア国立図書館で調査を行う予定であったが、出発数日前に骨折で全治3か月と診断され、同出張を2月に延期した。また2月に予定していたルーマニアでの調査は研究代表者がドイツでの調査と併せて行った。ルーマニアでの調査は順調に進んでいるが、平成27年度にも継続して行う。

次年度使用額の使用計画

今年度も継続して、ルーマニア出身のドイツ語作家や作品、ルーマニアのドイツ語話者マイノリティ史に関わる資料や情報の収集と分析を行う。刊行物の収集とともに、オーストリア国立図書館、ルーマニアのシビウにあるフリードリヒ・トイチュ文化センター内文書館(シュラットナーの原稿や書簡等が保管されている)、バイエルン州立図書館等での調査を行う。またクラウス・シュテファーニをはじめとするドイツのミュンヘン在住ルーマニア出身ドイツ語作家や研究者、ならびにシュラットナーとのインタビュー等も試みる。
研究成果を東北ドイツ文学会等の学会での口頭発表および学術論文により発表する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] マイノリティ文学とゲーテ2015

    • 著者名/発表者名
      藤田恭子
    • 雑誌名

      ラテルネ

      巻: 113 ページ: 12-13

  • [雑誌論文] アンドレアス・シュミットの 『フォルク・イム・オステン』序説 : 忘れられた戦時下ズィーベンビュルゲンのナチス文化雑誌と文学2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木道男
    • 雑誌名

      国際文化研究科論集

      巻: 22 ページ: 45-58

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Auf der Suche nach den Stimmen der "Marginalisierten" -Bemerkungen anlaesslich der Veroeffentlichung von "Die Buche. Eine Anthologiedeutschsprachiger Judendichtung aus der Bukowina"2014

    • 著者名/発表者名
      Kyoko FUJITA
    • 雑誌名

      Decuble, Gabriel H. u.a. (Hrsg.): "Kultivierte Menschen haben Beruhigendes..." Festschrift fuer George Gutu

      巻: 1 ページ: 112-125

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公開日: 2016-05-27  

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