研究課題/領域番号 |
25370339
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村松 真理子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80262062)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダンヌンツィオ / イタリア文学 / 日本文学 / 日欧比較文化 / 20世紀文化史 / 20世紀ヨーロッパ文学 / 大衆文化 |
研究概要 |
研究代表者は2013年、ダヌンツィオ生誕150周年の記念行事国際学術準備委員会に加わり、またその一環として2013年10月19日から12月13日まで東京大学駒場博物館において、イタリアおよび日本国内から出陳された展示品と研究成果を発表する特別展「ダンヌンツィオに夢中だった頃―カブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863-1938)生誕150周年記念展」を開催した。さらに京都大学人文科学研究所、京都産業大学等をはじめとする関西の研究拠点に所属する研究者と協力して、京都大学総合博物館での京都展も14年1月22日から3月9日まで開催した。駒場展・京都展ともに、国内外の一線の研究者たちによる講演会、シンポジウム、ギャラリートーク等、関連行事を多数実行し、関連分野の研究成果のパノラマを、学会のみだけでなく、地域や一般市民に「展覧会」というメディアを軸に発信したことは意義深く、日本およびイタリアの多くの新聞やネット上の媒体でも取り上げられた。 ダンヌンツィオという多様な切り口の可能な作家を対象とした当研究は、従来からのイタリア文学研究者だけでなく、フランス文化、日本文学、比較文化、メディア論、20世紀思想文化史等の分野に属して関連領域との関わりからダンヌンツィオを対象にする異分野の専門家たちの学術的な交流の場を作りだした。大学博物館という場での展覧会というメディアを生かし、大学院生、若手研究者たちが研究会を発足し、一連の行事の実現に協力する体制を作り、教育効果も大きかった。 2つの展覧会の成果は冊子2冊にまとめられ、ダンヌンツィオ研究の今後につながるものとなった。研究代表者は年間を通じ、イタリアの研究機関や文化団体と連携し、国際シンポジウムへの参加や広報を積極的に行い、イタリア語の刊行物にも成果を発表することができた。20世紀ヨーロッパ文化研究のジャンル融合的な発展と国際的可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多くの協力者を得て、初年度として期待以上の成果を挙げることができた。 まず展覧会準備期間に先立ち、若手研究者たちの「ダンヌンツィオ研究会」を発足し、テクスト読解の発表等を行い、レクチャーコンサート(4月8日)を海外からの研究者とともに行った。さらにその成果を展示内容に生かしつつ、展覧会開催中は演奏会「ダンヌンツィオの詩、トスティの歌」、国際シンポジウム「ダンヌンツィオに夢中だった頃ー国際詩人の軌跡とMishimaが交わるとき」(11月2日)や、学内外の学生や参観者のためのギャラリートーク、講演会、特別講座、主題講義等さまざまな関連行事を多数行い、入場者数は全期間を通じて4237人だった。 京都大学での京都展の開催を通じて、関西の現代イタリア文学研究者やヨーロッパ20世紀文化史の専門家と連携し、意義深い成果を上げるとともに、今後につながる研究者ネットワークを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
展覧会というメディアとそのカタログという形で発信した当研究の成果をさらに記録として発展させる。具体的には、すでにシンポジウム、ギャラリートークに参加した研究者に依頼しており、発表・講演会を今年度中に講演録・論集の形に編集する。 研究代表者は、展覧会でまとめた研究成果を図書の形で発表するため、個々のテクストの分析をあらためて行いながら、この作家の特異性とメデイアとの関係や時代性について、今日の視点から再評価する作業を進める。また、すでにダンヌンツィオとダンテのような古典的作品や日本の作家との関連、翻訳の問題について論文等にまとめたが、それらの方向性も今後深めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
展覧会開催事業は、年度末までの支出を完全に予想することが困難であったため、基金分を予備費的に確保しておいたため。 次年度の印刷費などが当初の計画以上に見込まれる部分に充当したい。
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