研究課題/領域番号 |
25370342
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
武田 千香 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20345317)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ブラジル文化 / ブラジル文学 / ポルトガル語圏文化 / ラテンアメリカ / ユーモア / 喜劇 |
研究実績の概要 |
計画どおり、江口佳子、渡辺一史、宮入亮、花田勝暁の4名を研究協力者とし、以下のとおり実施した ①19世紀~20世紀初頭のブラジルの演劇・文学における喜劇性の研究:マルチンス・ペーナとアルトゥール・アゼヴェードの演劇をつなぐ存在としてフランシスコ・ヴァスキスの演劇をその代表作『田舎のオルフェ』を通して研究し、論文として発表した。 ②また当初は3年目に行なう予定だったブラジル人の行動様式ジェイチーニョの研究を、出版社からの依頼を受けたのを機に行ない、本に著わした。それがやはり〈X〉⇔〈非・X〉に基づくことを示し、並行してサッカーやサンバやカポエイラにおいてもやはりそれに通じる側面があることに言及した。 ③本研究のテーマを扱ったシンポジウムを2回開催した。1度はブラジル大使館と共催した「ブラジルのリズム」で、もう一度は日伯架け橋の会および京都大学大学院総合生存学館(思修館)との共催による「ブラジル人の人生哲学[ジェイチーニョ]の秘密」であり、講演「心のルールをもつ国、ブラジル」およびパネルディスカッションを行なった。研究協力者と全5回にわたる研究会を実施し、その中でカポエイラ、カーニバル等ブラジルの文化事象を検証したほか、ポルトガルのモデルニズモ詩人フェルナンド・ペソアについて考察した。 ⑤本研究の成果をもとに3度の講演を行なった。1度はブラジル出張中の招待講演で、リオデジャネイロ州立大学においてポルトガル語で行なった。あと2回は国内で、1つはブラジル大使館との共催で実施したシンポジウムの基調講演で、もう1つは日本ブラジル中央協会ランチョンミーティングにおいて企業人対象に行なった招待講演である。また海外調査および資料収集:武田千香と江口佳子がブラジルにて資料および情報収集を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文学・演劇研究では、アルトゥール・アゼヴェードの演劇は次年度に持ち越しとなったが、それ以前にやるべき劇作家の存在に気づき、それを行なっただけで遅れているわけではない。モデルニズモの文学・軍政期の文学の研究は研究会で予定通り行なえた。またカポエイラやサンバ等の文化事象の検証も公開研究会で行なえた。 次年度行なう予定だった行動様式ジェイチーニョの研究が行なえたばかりでなく、それを本に著わすことができ、また本研究の成果の発表を行なうためのシンポジウムも当初の予定よりも早く、しかも2度開催することができた。さらに講演も、海外でのものを含む3回行なった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、研究代表者を中心に、江口佳子、渡辺一史、宮入亮、花田勝暁の4名より研究協力者としての協力を得て推進する。今年度は引き続き①19世紀から20世紀にかけてのブラジルの演劇と文学における喜劇性の研究を推進するほか、②ブラジルにおけるモデルニズモについて研究する。 ①の文学・演劇については19世紀末から20世紀初頭のブラジル演劇界を代表する喜劇作家アルトゥール・アゼヴェードの演劇とブラジル流喜劇の形成との関係について、代表作『連邦首都』を手掛かりに研究し、論文にまとめる。 ②のモデルニズモの時代は、ブラジルの文化および文学における喜劇性の重要性が決定的となった時期である。モデルニズモに関する研究を、研究協力者と月1回ほどのペースで開催する研究会で推進する。ここではポルトガルのモデルニズモとの比較の観点を入れ、またブラジルのモデルニズモと笑いやユーモアとの関連についても留意する。 この成果をふまえて本研究のテーマに関連する催しを開催する。海外における研究調査活動は、研究代表者のほか研究協力者1名が資料収集および研究調査を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の使用状況は計画通りであったが、初年度に公務のため海外調査を行なえず、その分を計画になかったシンポジウム開催に使用したが、共催相手が公的機関で、場所を無償で提供してもらえたためその分差額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
報告書作成など、本研究の成果発表のために使用することを考えている。
|