研究課題/領域番号 |
25370354
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
亀井 一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00242793)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドッペルゲンガー / モチーフ研究 / 心理学の歴史 / 人間学 / ジャン・パウル / E・T・Aホフマン / ドイツロマン主義 / 小説論 |
研究実績の概要 |
昨年度実施したマールバハ図書館で収集した資料のほか、ネット上に公開されている一次資料を利用し、プラトナーの人間学が、ジャン・パウルのテクストに頻出する肉体=機械のイメージの源泉になっていることを明らかにした。また、これに関連して、ジャン・パウルの書簡、『抜き書き帳』、作品の分析から、1781年のプラトナー=ヴェーツェル論争が、神学生だったジャン・パウルが諷刺作家へ転向する契機になったのではないかとする仮説を提示した。この研究は、紀要論文『神経と魂』にまとめられている。ただし、この肉体=機械のイメージがドッペルゲンガーとどのようにつながるのかについては、今後の課題としたい。J・Ch・ライルについては、名古屋大学図書館で収集した『心理学のための資料集』(1795-1815)所収の論文を調査している。 ジャン・パウルのドッペルゲンガー、ライプゲーバーが登場する三つのテクスト『ジーベンケース』、『フィヒテ哲学の鍵』、『巨人』とE・T・Aホフマン『悪魔の霊液』を比較考察し、アレゴリカルなドッペルゲンガー形象が心理的表象へと変貌してゆく過程を明らかにした(学会誌に投稿済み)。その際、ドッペルゲンガーが誰に現れるのか、という観点から、「再帰的ドッペルゲンガー」(ドッペルゲンガー自身に現れる)と、「三人称ドッペルゲンガー」(第三者に現れる)という概念を導入したことも、方法論的な成果として挙げたい。この概念は、ドッペルゲンガー論を語り手論に接続するときに、活用することができる。 昨年に引き続き、大阪教育大学のオープンキャンパス研究紹介コーナーでパネル展示した(『ドイツ文学における主人と従者の物語』)。ポスターは、大学HPでも公開されている(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kenkyo/kenkyuseika/pdf/H27_1/23.pdf)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究発表が遅れがちではあるが、着実に研究を進めているので、問題はない。 ただ、当初仮説として提示した作者とドッペルゲンガーの関係は、語り手論的な考察とは別立てのテーマではないかと考えるようになった。作者論の部分が、結果的に、来年度にずれこむことになる。とはいえ、まだ二年あるので、最終年度までにはまとまった成果を出すことができると思う。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、クライスト『アンフィトリオン』とクリンガー『双子』の研究を進めると同時に、これまで主軸としてきたジャン・パウルとE・T・Aホフマンの研究成果をまとめ、発表する。 第3年度に取り組んできた語り手論を、作者の自己描出という観点から再考する。 ホームページを更新し、これまでの研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
発刊予定の洋書が届かず、その代わりに、和書を購入した。使い切ることのできなかった予算は残すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
必要な消耗品に充てる。
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