研究課題/領域番号 |
25370355
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂本 千代 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80170611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / フランス / サンド / スタール夫人 / ロマン主義 / 旅 / 音楽 |
研究実績の概要 |
ロマン主義の先駆者スタール夫人と、ロマン主義最盛期に活躍したジョルジュ・サンドの作品・書簡中の「国境を越えること」「性を越えること」に関するトピックについて、内容、文体、間テキスト性、文学史上の位置づけや影響関係などを検討することにより、音楽と旅による国家とジェンダーの越境のテーマとその射程を明らかにするのが本研究の目的である。 平成26年度は前年の研究を引き継いで、スタール夫人の著作、主に『コリンヌ』の考察をさらに進めた。そこに描かれたヴェネツィアに焦点をあてて、この「境界」都市における異文化接触およびジェンダーの問題について検討した。また、オーロール・デュドヴァン(サンドの本名)がジョルジュ・サンドという男性名のペンネームを使って、男性の仮装をしながら、別れた恋人(詩人ミュッセ、男性)に向けて書いた『旅人の手紙』の最初の3通の分析を通じて、サンドの自己意識についての考察を行うとともに、ロマン主義的な精神風土における「イマジネーションの力」に関係する部分を取りあげて、その表象の意味を考察した。 平成26年5月には協力研究者であるマルティーヌ・リード氏(フランス・リール第3大学教授)を招聘した。神戸大学でのリード教授の講演と坂本による解説・討論会、もうひとりの研究協力者である高岡尚子氏(奈良女子大学準教授)の企画・準備によるリード教授の奈良女子大学での講演会、東京の日仏会館およびお茶の水大学での講演会が開催され、坂本はリード教授とそれらの講演の内容に関する打ち合わせをし、すべてに同席して彼女と準備や検討をおこなった。リード教授の講演会は大きな反響を呼び、特にお茶の水大学での講演は論文として日本フランス語フランス文学会の『フランス語フランス文学研究』106号(2015年3月刊)に掲載され、また彼女の著書『ジョルジュ・サンド』が日本語に翻訳されることも決定した(刊行時期未定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンドに関しては、平成25年に加藤由紀氏との共著『ジョルジュ・サンドと四人の音楽家 リスト、ベルリオーズ、マイヤベーア、ショパン』を刊行した。同じく25年に、日本ジョルジュ・サンド学会にて研究発表(「ジョルジュ・サンドと音楽家」)をおこない、27年5月にも『旅人の手紙』についての研究発表をする予定である。また、研究成果を論文「サンド『旅人の手紙』第1・第2・第3信について」として執筆し、平成27年7月に刊行予定である。 スタール夫人に関しては、平成26年5月に論文「スタール夫人の『コリンヌあるいはイタリア』を二十一世紀に読む」、27年3月に「終わりの予感 『コリンヌ』のヴェネツィア」を刊行した。また、26年12月に大阪府立大学において「文学とジェンダー」研究の一環として『コリンヌ』に関する研究発表をおこなった。 平成26年5月には協力研究者であるマルティーヌ・リード氏(フランス・リール第3大学教授)を招聘し、神戸大学、奈良女子大学、東京の日仏会館およびお茶の水大学で講演会を開催し、大きな反響を得た。リード教授のお茶の水大学での講演は論文として日本フランス語フランス文学会の『フランス語フランス文学研究』106号(2015年3月刊)に掲載され、また彼女の著書『ジョルジュ・サンド』が日本語に翻訳されることも決定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にはサンドの『コンシュエロ』『ルードルシュタット伯爵夫人』とそれに関連する作品の考察にあまり多くの時間をさくことができなかったので、27年度にはこれらの作品の検討を深め、論文執筆および研究発表の予定である。また、本研究で取り扱うスタール夫人およびサンドの諸作品と「旅」・「観光」との関連(「旅」と「観光」はどこが違うのか、「ツーリスト」の誕生とロマン主義の関係、19世紀ヨーロッパにおけるそれらと21世紀それらとの違い)や作品中の「旅」「音楽」「ジェンダーの越境」の間の関連について考察するために、できれば平成27年夏に現地調査・資料収集をおこないたい。そのうえで、本研究の成果のまとめをおこなう予定である。なお、スタール夫人とサンドというロマン主義のふたりの代表的な女性作家を扱う本研究のあとには、同時代の男性作家との対比をも視野に入れ、文学的イマジネーションとジェンダーの関係の研究へと広げていきたいと考えている。 また、協力研究者マルティーヌ・リード氏(リール第3大学教授)および高岡尚子氏(奈良女子大学準教授)とは緊密な連絡を取って研究協力を続ける。特に、リード教授とは平成28年度以降も女性作家および「文学とジェンダー」に関する共同研究をフランスおよび日本で続行するために、神戸大学とリール第3大学の教員交流制度などが利用できないかを含めて検討する。
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