アルベール・カミュ研究－「暴力」に抗する文学と思想

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25370356
• 研究機関: 奈良女子大学
• 研究代表者: 三野 博司 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (90117979)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: アルベール・カミュ研究

研究実績の概要

申請課題「＜暴力＞に抗する文学と思想」の二年目として、研究の基礎作業である情報・資料収集を継続し、また論文を執筆、研究会での研究発表を行った。（１）平成26年12月からPhilippe Vanney との共編により、日仏語による研究誌『カミュ研究 Etudes camusiennes』（日本カミュ研究会編集・発行）第12号を編集した。またカミュの全作品を対象にして、そこに現われる墓地の持つ意味を、死者に対する記憶と忘却の視点から分析した論文「カミュにおける＜墓地＞――記憶と忘却」を執筆した。これは平成27年5月末刊行予定である『カミュ研究 Etudes camusiennes』第12号に掲載される。（２）平成27年2月に刊行された、 "Camus l'artist, Colloque de Cerisy" に仏語論文 "Comment les Japonais　ont-ils rencontre Camus ?" ( p.293-299) を発表した。（３）平成26年10月3日パリ第４大学において開催された博士論文公開審査に審査員として招かれ、この機会に研究者との意見交換を行った。（４）平成26年11月7日～16日、科研費によりフランスへ出張し、パリ第３大学において開催された国際カミュ学会理事会に出席して複数のカミュ研究者と情報交換を行い、また国立図書館において調査活動を行った。（５）平成26年6月24日お茶の水女子大学、12月20日キャンパスプラザ京都において、日本カミュ研究会代表として２回の研究会を主催し、参加者たちと情報交換・意見交換を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

二度のフランス出張により、国際カミュ学会会長アニェス・スピケル氏、同副会長マリー＝テレーズ・ブロンドー氏、カミュに関するドキュメンタリー映画を制作したアブラハム・セガル氏らと会談し情報・意見交換を行い、またパリの国立図書館において資料調査を行った。日本語による論文「カミュにおける＜墓地＞――記憶と忘却」を執筆し（平成27年5月末刊行予定）、「暴力」の主題を、暴力を受けて葬られた死者の記憶の観点から追究する方向へと発展させた。フランス語による論文 " Commnent les Japonais ont-ils rencontre Camus "を収めた研究書 "Camus l'artist Colloque de Cerisy " が平成27年2月に刊行され、カミュ研究のあらたな進展への足掛かりをつくることができた。

今後の研究の推進方策

平成27年度は、申請課題「＜暴力＞に抗する文学と思想」に関わる重要な主題である「殺人」をとりあげて、『幸福な死』『異邦人』に見られる無垢な殺人者、『カリギュラ』『誤解』における有罪を意識する殺人者、さらには『ペスト』『転落』に現われた殺人とその贖罪の問題を追究する予定である。また平成27年度の科研費によるフランスへの出張は２回を予定している。9月にはパリの国立図書館，およびエクサン＝プロヴァンスのメジャーヌ図書館にあるアルベール・カミュセンターにおいて資料収集を行い，また11月には国際カミュ学会理事会に出席すると同時に、そこに集うフランスをはじめとする各国の研究者との情報交換に努める計画を立てている。

研究成果

• [学会発表] カミュにおける＜墓地＞――記憶と忘却 (2014)
  • 著者名/発表者名: 三野博司
  • 学会等名: 日本カミュ研究会第59回例会
  • 発表場所: キャンパスプラザ京都
  • 年月日: 2014-12-20
• [学会発表] 近著を語る『カミュを読む――評伝と全作品』 (2014)
  • 著者名/発表者名: 三野博司
  • 学会等名: 日本カミュ研究会第58回例会
  • 発表場所: お茶の水女子大学
  • 年月日: 2014-05-24
• [図書] " Comment les Japonais ont-ils rencontre Camus ", Camus l’artist Colloque de Cerisy, (2015)
  • 著者名/発表者名: Anges Spiquel, Anne Prouteau, Sophie Bastien, Mino Hirosh,Pierre-Louis Rey, Philippe Vanney, Marie-Therese Blondeau, Eve Morisi, David Walker, Raymond-Gay Crosier, Hirsoyuki Takatsuka, Harutoshi Inada, Maurice Weyembergh, Helene Ruffat, Gay Basset
  • 総ページ数: 330 (293-299)
  • 出版者: Presses universitaires de Rennes,