研究課題/領域番号 |
25370356
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
三野 博司 放送大学, 奈良学習センター, 特任教授 (90117979)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 暴力 / 記憶と忘却 / 反復への意志 |
研究実績の概要 |
申請課題「<暴力>に抗する文学と思想」の4年目として、情報・資料収集を継続するとともに、これまでの研究の総括である単著の書籍を刊行し、また個別テーマに基づいて、複数の論文を完成させ、さらに次の論文の執筆準備を始めた。(1)400頁を越える『カミュを読む―評伝と全作品』(大修館書店)を6月に刊行した。カミュの生涯を追いながら、その全作品を、暴力的なるものとの戦いの視点から、詳細に分析、解説した。(2)「死」の主題と関わって、個別テーマである「墓地」を取り上げて分析した論文 "Le Cimetiere chez Camus ; memoire et oubli " を、国際研究誌 Presence d'Albert Camus 第8号に発表した。(3)10月20日、21日、フランスのアンジェ・カトリック大学で開催された国際学会の学術委員を務め、司会を分担した。さらに、暴力に対抗しうる「反復の意志」を分析した研究 " Siyphe ou l'esprit du boushido - Camus et Shuzo Kuki" を発表した。(4) 5月28日学習院大学、および12月24日キャンパスプラザ京都において、日本カミュ研究会代表として2回の研究会を主催した。(5)9月および10月に、科研費によるフランスへの出張を行った。各地の図書館においてカミュ関連資料調査を行うとともに、旧知のカミュ研究者と意見交換を行った。また、アンジェ・カトリック大学において開催された国際学会では、世界中から集ったカミュ研究者と貴重な情報交換や意見交換を行い、カミュ研究の現況についての知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
400頁を越える単著『カミュを読む―評伝と全作品』の刊行により、科研費課題「<暴力>に抗する文学と思想」についての概要を明らかにした。この書物において、カミュの習作「ルイ・ランジャール」から遺作『最初の人間』までの全作品を、暴力的なるものへの反抗の視点から、詳細に解説、分析した。個別主題についても、Societe des Etudes camusiennes(国際カミュ学会)が刊行する研究誌 "Presence d'Albert Camus" 第8号に仏語論文 " Le Cimetiere chez Camus; memoire et oubli "を発表した。10月にはフランスのアンジェ大学およびアンジェ・カトリック大学で開催された国際カミュ学会 "Albert Camus, les vertiges du sacre " において、暴力に対抗しうる「反復の意志」を分析した研究発表 " Siyphe ou l'esprit du boushido - Camus et Shuzo Kuki "を行い、きわめて刺激的な発表であるとの評価を得た。また、科研費による二度のフランス出張により、図書館での資料収集、カミュ研究者との情報交換を進めた。これらにより、総合的および個別的の両面において、課題の探求が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、申請課題の完成年となる。平成28年6月に刊行した単著『カミュを読む―評伝と全作品』によって「<暴力>に抗する文学と思想」の主題はひとつのまとまりを得たが、さらなる発展へとつなげていきたい。平成29年度の科研費によるフランスへの出張は2回を予定している。9月にはパリの国立図書館での調査、およびカミュ研究者たちとの交流を通じての情報交換。11月にはエクサン=プロヴァンスにおいて開催予定の国際カミュ学会に出席し、各国のカミュ研究者と情報交換を行う。
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