アルベール・カミュは、二つの世界大戦をもたらした激動の時代である20世紀を生きた。彼は、人間を襲う暴力的なるもの(病気、死、災禍、テロ、戦争、全体主義)に対抗して、一貫して超越的価値(キリスト教や左翼革命思想)を拒否し、人間の地平にとどまって生の意味を探し求めた。この観点から、カミュが生きた時代状況をつぶさに検討し、作家の全作品を読み直し、その特性を明らかにした。その成果は、2016年6月に刊行した単著『カミュを読む―評伝と全作品』、日本語およびフランス語によって研究誌に発表した論文として結実した。
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