昨年度に引き続きパリの5人の出版書籍商が出版した活字本の特定とそのデータベース化を行い、活字本に現れるパラテクストの分析を行った。活字本の特定には、パリ国立図書館のBP16とGallica、Gesamtkatalog der Wiegendrucke、British LibraryのISTC、そしてUSTC(Universal Shorat Title Catalogue)を利用した。2015年9月5日から12日までパリ国立図書館で補足調査も行い、同図書館が所蔵する活字本を披見してパラテクストの撮影する一方で、同図書館所蔵のCatalogue general des incunables des bibliotheques publiques de Franceなど諸文献を参考にして分析を行った。 今年度は、完成させたデータベースのひとつ出版書籍商Michel Le Noirのデータベース(253点)を中心に分析を行った。特に「著者」の形象をパラテクストに読み取ることができる活字本を取り挙げ、通時的にその変化を辿り、それらの「著者」の形象がMichel Le Noirと姻戚関係を持つJean TrepperelやGeffroy de Marnef、一時期協同関係にあったAlain Lotrianが出版した活字本と比較して考察を行った。Michel Le Noirの活字本は、ラテン語作品が多くを占めるインキュナブラではタイトルとプリンターズマークで表紙が飾られることが多く「著者」の形象が現れることが少ない。また、1500年からは急激に俗語(フランス語)作品が増えるが、プリンターズマークは確実に入れられる一方で、パラテクストは「著者」の形象よりもテクストの内容を木版画で示す場合が多いことが明らかになった。
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