今年度は昨年度に引き続き、まず「円卓物語」の復活とブルターニュの民謡収集の関連に関する調査・研究を優先的に進め、その成果の一部を鹿児島大学の『人文学科論集』に論文として発表したほか、日本ケルト学会研究大会、日本ケルト学会東京研究会および日本ケルト学会九州研究会において口頭で発表した。 2015年はフランスにおける最初の民謡集『バルザス=ブレイス』の著者ラ・ヴィルマルケの生誕200年であり、それを記念して彼の故郷カンペルレで11月12日~13日に行われた国際シンポジウム「『バルザス=ブレイス』の彼方へ」に参加し、フランスにおけるラ・ヴィルマルケ研究の最新の成果に触れるとともに、研究者たちと討論する機会を得た。 また今年度は、新たな研究課題としてラフカディオ・ハーン研究にも取り組んだ。申請時には予定していなかった課題であるが、5月に学会で訪れた富山大学において、ラフカディオ・ハーンの蔵書を収めたヘルン文庫を閲覧し、『バルザス=ブレイス』をはじめとするブルターニュの口承文化関係の蔵書を発見したことが機縁となった。そこで10月にヘルン文庫において文献調査に数日を費やし、ハーンの口承文化に関する関心の原点にブルターニュがあることが確認できたので、その成果を平成28年2月に富山大学で行われた国際シンポジウム「ラフカディオ・ハーンとフランス」において発表した。従来アイルランドのみに焦点が当てられてきたハーンとケルトの関係に一石を投じる研究であり、発表の内容は論文として富山大学の『ヘルン研究』創刊号に掲載された。
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