『生理学要綱』において、生理学者Hallerからの影響、とりわけ『生理学初歩』の第二仏訳版(1769)の影響が決定的であることを世界で初めて示した。それ以外に従来知られていなかった典拠、例えば、生理学者Larocheの著作などを発見した。ディドロの発生観については、後成説的解釈が主流だが、『要綱』においては、むしろHallerのそれに近い、後成説的変異を認める胚種先在説に移行したことを明確にした。『要綱』結論部の道徳は、17世紀人文主義者Heinsiusの影響を留めており、その小論「ストア哲学讃」(新発見)が、『要綱』と『セネカ論』を結び、晩年のディドロ哲学の統一的解釈に通じることを解明した。
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