研究課題/領域番号 |
25370365
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
細見 和之 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (90238759)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カツェネルソン / ワルシャワ・ゲットー / ホロコースト / イディッシュ文学 |
研究概要 |
本年度は、ヘブライ語、ポーランド語の基礎の学習からはじめた。その後、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーでイディッシュ語で書き上げた最大の戯曲「バビロンのほとりで」の訳文をさらに練り上げるとともに、比較的小さな戯曲とはいえ重要な「ヤコブとエサウ」をイディッシュ語から翻訳した(これはのちに『ナマール』神戸・ユダヤ文化研究会、第18号に掲載)。カツェネルソンは「バビロンのほとりで」を自らの演劇サークルで地下ギムナジウムの生徒たちを中心に上演にむけて練習していたが、実現にはいたらなかった。それに対して、「ヤコブとエサウ」についてはワルシャワ・ゲットーで実際に上演されたことが知られている。 さらに、9月1日から9月6日にかけて、イスラエル、ハイファ郊外の、「ゲットー戦士の家」キブツに滞在し、同キブツの記念館の資料調査にあたるとともに、カツェネルソンとゲットー戦士、とくにイツハク・ツケルマン、ツィヴィア・ルベトキンという、ゲットー戦士の家キブツを創設したふたりを知るひとびとにインタビューを行った。 とりわけ、前述の「ヤコブとエサウ」がゲットーで上演された際、ヤコブ役で出演されていたハヴカ・ラバンさんにお会いできたのは収穫だった。ラバンさんからは、ゲットーについて、カツェネルソンについて、さらにはツケルマンとルベトキンについて、貴重な話をお伺いすることができた。 本年は、ポーランド関係の文献の収集にも努めた。引き続き、ヘブライ語、ポーランド語の学習とともに、これらの文献の読み込みにも時間をあてる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイファ郊外の「ゲットー戦士の家」キブツを訪問して、記念館の資料を調査するとともに、関係者にインタビューすることは、この研究の重要な柱だった。ところが、イスラエルをめぐる政治情勢が緊迫したため、一時期は訪問を見合わせる可能性も生じた。現地の知人とぎりぎりまで連絡を取り、最終的に訪問を決意した。結果は、とても重要な成果をあげることができた。そのかぎりでは、研究は大いに進展したといえる。 カツェネルソンのイディッシュ語の戯曲「ヤコブとエサウ」を翻訳・発表できたことも大きな成果である。 しかし、ヘブライ語とポーランド語の学習は容易ではない。まだまだ基礎の域にも達せず、引き続き基礎的な学習が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
イスラエル、ハイファ郊外の「ゲットー戦士の家」キブツでの調査・研究を一応果たせたので、今後はいったんワルシャワをはじめポーランドでの調査・研究をひとつの焦点とする。とくに、ワルシャワの「ユダヤ史研究所」での資料調査、ワルシャワ・ゲットー跡地での調査、トレブリンカ絶滅集要所跡の調査が重要となる。 それらの調査を踏まえて、ふたたびイスラエルの「ゲットー戦士の家」キブツに滞在する必要が生じるかもしれない。さらに、東ヨーロッパの他の地域におけるイディッシュ文学の歴史を探ることも、カツェネルソンのイディッシュ文学を考えるうえで大事なポイントとなるだろう。 ヘブライ語、ポーランド語の学習を引き継ぎつつ、カツェネルソンのワルシャワ・ゲットーにおけるイディッシュ文学の全体像も描いてゆく必要がある。
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