研究課題/領域番号 |
25370365
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
細見 和之 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (90238759)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カツェネルソン / ワルシャワ・ゲットー / イディッシュ文学 / ホロコースト / シオニズム / ナチズム / ブンド |
研究実績の概要 |
今年度は、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書き上げた最大の戯曲『バビロンの川のほとりで』の翻訳の仕上げに力を注ぎ、その第1幕を神戸・ユダヤ文化研究会の機関誌『ナマール』19号に発表した。また、カツェルソンのワルシャワ・ゲットーでの創作活動の意味を問いかけた論考「ふたつの超越を媒介する言葉」を、『日本文学』8月号(日本文学協会)に発表した。さらに、カツェネルソンを主題としたものではないが、ホロコーストを重要な背景として著書『フランクフルト学派』を出版した。 8月27日から9月3日にかけて、ポーランドとチェコへ調査に出かけた。ポーランドでは、ワルシャワのポーランド・ユダヤ人歴史博物館、ユダヤ史研究所、トレブリンカ絶滅収容所記念館で、カツェネルソンおよびイディッシュ文学に関する文献・資料調査にあたった。また、チェコでは、プラハで、主としてユダヤ博物館、スペイン・シナゴーグを中心とした旧ユダヤ人地区、共産主義博物館などで、カツェネルソンおよびイディッシュ文学に関する文献・資料調査にあたった。 とくにプラハの歴史からは、カツェネルソンの活動したワルシャワとプラハをあらためて比較する視点、さらには、ハンガリーのブダペストをも含めた3つの都市におけるイディッシュ文学の展開、ユダヤ人の歴史を捉える必要について、大いに示唆されるところがあった。 また1年をとおして、ヘブライ語の学習と平行して、イスラエルの代表的なカツェネルソン研究者、シェイントゥフのヘブライ語によるカツェネルソン論を読み進めた。また、ポーランドの歴史に関する文献をつうじて、ポーランドの歴史の学習を続けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査年度の1年目にイスラエルを訪れて、ゲットー戦士の家・キブツで調査できたことを受けて、今年はワルシャワだけでなくプラハを訪れることによって、東ヨーロッパという広い地域から見たワルシャワないしワルシャワ・ゲットーの意味を考えるという視点を得られたことは意義深い。さらに、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書き上げた最大の戯曲『バビロンの川のほとりで』のイディッシュ語からの翻訳を仕上げ、まずその第1幕を神戸・ユダヤ文化研究会の機関誌『ナマール』に掲載することができた。これは、長大な戯曲の全体を出版するための大事な一歩となるはずである。また、ヘブライ語の学習を進め、シェイントゥフのカツェネルソン論を少しずつ読み進めるようになったことも今年度の成果としてあげることができる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ヘブライ語の学習をさらに進めるとともに、第1幕の翻訳を掲載した『バビロンの川のほとりで』の全訳発表にむけて努力するとともに、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書き残した他のイディッシュ語作品の全訳を作成するように努める。そして、ワルシャワという都市のなかにカツェネルソンの活動を位置づけるため、引き続きワルシャワ・ゲットーを中心とした現地調査およびワルシャワでの文献・資料の調査にあたる。そして、カツェネルソンのワルシャワ・ゲットーでのイディッシュ語での文学活動を、広く思想史的に問い直す考察を行ってゆく。そのなかで、ポーランド語の学習も進めてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
18円というわずかな金額を残すことになったが、この金額で特に購入する必要のあるものがなく、次年度に回すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、ふたたびワルシャワを中心とした調査、ヘブライ語に加えてポーランド語の学習を計画しているので、そこでの費用に組み込みたい。
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