研究課題/領域番号 |
25370367
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
原口 尚彰 東北学院大学, 文学部, 教授 (60289048)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ローマ書 / ディアスポラ / 書簡論 / 聖書学 / 文献学 |
研究概要 |
本研究プロジェクトの初年度であるので、ローマ書の文献学的・聖書学的研究に関する詳細な文献リストを作成し、主要な業績を検討して、未解決の課題の把握に務めた。 ローマ書は、初代教会最大の宣教者であり、思想家であったパウロがローマ帝国の首都ローマにある初期の教会に宛てた書簡であるので、帝政ローマ期初期のローマの政治的・社会的・文化的・宗教的状況を踏まえた上で、ローマのキリスト教徒が置かれた状況を史料に基づいて検討した。彼らは多神教的異教世界とは根本的に異なる宗教観を持つ宗教者の集団を構成しており、ユダヤ人達の置かれた状況に平行する宗教的ディアスポラ状況に置かれていたことを明らかにした。ローマ書はローマにあるディアスポラ共同体であるキリスト教会に対して書かれた書簡であるという性格を強く持っている。私はこの考察結果を平成25年9月13-14日に立教大学で開催された日本新約学会で、「ディアスポラ書簡としてのローマ書」という題で発表し、新約聖書学の研究者達と意見交換を行った。 さらに、ローマ書全体の内容と構成について、書簡論的視点から分析することに努めた。まず、ローマ書の本文を子細に読んだ後に、先行研究を批判的に検討し、評価を加えた。次に、私自身の書簡論的分析を試み、「ローマ書の書簡論的分析」という論文にまとめて、東北学院大学ヨーロッパ文化総合研究所編『ヨーロッパ文化史研究』第15号(2014年3月)135-154頁に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属する東北学院大学には、聖書学関係の文献はかなり整備されているので、ローマ書に関する最新の文献や、特殊な主題に関する文献を検索して取り寄せれば、必要な研究資料は揃えることが出来た。 本研究の主題は長い間温めて来たテーマであり、今までの研究の蓄積もあり、何を具体的になすべきかが明確である。 本年度は大学の行政職の任期が終わり、研究と教育に時間と労力を割くことが出来たことも大きい。
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今後の研究の推進方策 |
ローマ書の本文については、写本の読みが大きく分かれているので、文献学的な研究の前提として、写本の検討と本文の確定の作業を欠かすことが出来ない。本年度の前半には、この問題に主として取り組んでみたい。 もう一つの課題は、ローマ書の修辞学的な分析であり、全体としての修辞的種別の分類と、個々の部分が果たす修辞的効果や機能の分析を行うことである。過去にガラテヤ書や使徒言行録の演説を修辞学的視点から分析した経験を生かしながら、さらに新しい洞察を得たいと考えている。
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