研究課題/領域番号 |
25370369
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立音楽大学 |
研究代表者 |
宮谷 尚実 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (40386503)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 言語思想 / 18世紀 / ハーマン / 沈黙論 / ルター / ドイツ文学 |
研究概要 |
18 世紀から19 世紀にかけてのドイツ語圏における言語思想史における「沈黙」の意義をテーマとする本年度は、ハーマン、ヘルダー、W. v.フンボルトにおける言語起源論に関する著作を主に扱った。 まずハーマンに関する「沈黙」の諸相とその積極的な意味を明らかにするために、初期の「ロンドン文書」に始まり、著作集『愛言学者の十字軍行』、その中でも「美学提要」、さらに言語起源論関連の著作を経て後期の著作にわたる言語観に関わる文献学的再調査、および文体論的分析を行った。従来、「沈黙」概念への注目がなされてこなかったため、初版本やさまざまな版との比較でこれまで見落とされてきた情報の調査を行った。これについては、研究全体の実施計画の通り、当年度のみならず、本研究期間全体にわたり丹念な調査・吟味を継続する。 本年度は、ルターの詩編講義における「沈黙」の概念との関連に特に着目し、ハーマンにおける聖書解釈やルターの著作に関する言及において「沈黙」に関連する概念がどのように表れているかを調査し、その結果を「国立音楽大学研究紀要」に発表した。予定通り、ドイツ・コンスタンツ大学図書館での集中的研究作業を行い、近現代のドイツ文学を専門とし、『ヘルダーの言語哲学と認識批判』(1988 年)の著作もあるウルリヒ・ガイアー教授の助言も得た上で、その成果を研究滞在期間に草稿としてまとめた。その成果にさらに考察を加えたドイツ語論文を日本独文学会の学会誌(国際誌)に投稿し、査読を経て現在の時点で掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では日本語による学会での口頭発表を予定していたが、現時点でドイツ語論文の学会誌(査読あり)への掲載が決定しているため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から継続してヘルダーからフンボルトにかけての「沈黙」の諸相と意義を明らかにする。古典修辞学から 現代言語思想に至る「沈黙」の系譜の枠組みを再構築する作業に着手し、特に「沈黙」をその語源に持つ神秘思想とハーマンらとの相違点を明らかにする。コンスタンツ大学およびドイツ国立図書館での資料収集と研究作業を継続する。 すでに基礎的調査には着手しているが、その結果、論証上の困難が予想されている。場合によっては、成果を迅速に公表することに固執せず、より丹念に時間をかけての調査が必要になるかもしれない。
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