本研究では、18世紀ドイツの著作における「沈黙」の意義を考察した。言語をめぐる言説のなかではヘルダーの『言語起源論』をおもに扱い、さらにヘルダーが同時期に著した音楽作品にも着目し、その思想的系譜を辿りつつ「沈黙」の諸相を分析した。その結果、①言語の起源と不可分な沈黙、また②言語として「語り得ない」沈黙の表現を抽出することができた。①に関しては、ルターやハーマンからの系譜を明らかにすることができた。②については、オリジナル手稿の文献学的調査を行うことにより、印刷された資料のみを用いた研究では得られない知見を得ることができた。
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