18世紀後半以降、西洋はオリエントという異世界を理解するためにさまざまな知的営為を積み重ねていく。本研究では19世紀のフランス文学において、こうして得られた知見がいかに作品世界に取り込まれていくのか、またそれがどのような形で作家のインスピレーションを発動させるのかを考察した。その結果、オリエントは作家の価値観やイデオロギーを表明するためのある種のアリバイとして機能しうるということ、また19世紀の旅行記が「自らを語る」という自伝的性格を持つ場合があり、そのことによってフランス文学の伝統であるユマニスムの系譜に連なる潜在性を秘めているということが明らかになった。
|