研究課題/領域番号 |
25370373
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高橋 慎也 中央大学, 文学部, 教授 (60171493)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポストドラマ演劇 / ドイツ演劇 / 国際研究者交流(ドイツ) / 国際情報交換(ドイツ) / 国際演劇交流(ドイツ) |
研究概要 |
平成25年度は、申請計画に基づき下記のような研究を遂行した。 〇上演・戯曲データベースの作成と分類:ドイツの演劇雑誌『Theater heute』のデータ、ベルリン演劇祭のデータなどを整理し、1970~2010年までのデータ整理を行い、この間のポストドラマ演劇の動向分析を行う基礎資料を作成した。 〇ドイツ人研究者とのワークショップの開催:ポストドラマ演劇理論の提唱者ハンス・ティース・レーマン教授(フランクフルト大学)、パフォーマンス演劇理論のの専門家のパトリック・プリマヴェジ教授を招いたワークショップを中央大学で開催し、ポストドラマ演劇理論の現在までの展開に関する意見交換を行った。その結果、現代ドイツのポストドラマ演劇と演劇学の傾向が、主として二つに分類できることが明らかになった。 〇現地調査と資料収集:2回にわたり、ベルリンとハンブルクの劇場、演劇アーカイブおよび演劇学研究所を訪問し、現地調査を行うとともに、エリカ・フィッシャー・リヒテ教授と意見交換を行った。また同教授の研究書『Theaterwissenschaft』を共同翻訳し、『演劇学へのいざない』(国書刊行会)という書名で公刊した。 〇上演と戯曲の分析・宣告理論の検証:ポストドラマ演劇の代表的演出者であるマルターラー、カストルフ、ポレシュらの上演分析をポストドラマ演劇理論の視点から行い、その「ライブ性」、「インタラクティヴ性」、「マルティメディア性」、「ハイブリッド性」の特徴を明らかにした。また先行理論としてマーヴィン・カールソン(ニューヨーク市立大学)のパフォーマンス理論を集中的に分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年は、マーヴィン・カールソンのパフォーマンス理論以外の先行理論の整理がやや遅れている。これはポストドラマ演劇理論提唱後の演劇理論が、世界各国で多様化してまだ十分には整理されていないことに起因している。演劇の分野ではパフォーマンス・アートのさらなる隆盛、それを背景とした『パフォーマンス性』概念の精密化が進んでいる。他方では世界的な社会問題の深刻化に伴って「政治性」「社会性」「ドキュメンタリー性」といった「記号性」の意味を重視する理論形成も進行している。こうした演劇学理論の多様化の急速な進展によって、本件では先行研究の整理がやや遅れることとなった。しかしデータベースの作成とデータ分析、ドイツ人研究者とのワークショップ、現地調査、個別の上演分析は計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は申請計画に沿って下記のような研究・調査を実施する予定である。 〇上演・戯曲データベースの作成と分類:日独のポストドラマ演劇国際交流の動向を明らかにするために、日本の演劇データを含むデータベースを作成し分析する。 〇ドイツ人研究者との共同研究:バイヤーデルファー教授(ミュンヘン大学)と、戯曲と上演の相互関係に関する共同研究を軸として実施する予定である。 〇現地調査と資料収集:ミュンヘン大学演劇研究所、ゲーテ・インスティテュートの演劇アーカイヴの資料を主に調査する。 〇上演と戯曲の分析:タールハイマーの上演、デア・ローアの戯曲のクリーゲンブルク演出による上演の分析を主に行う。 〇教材と教授法の開発:収集した資料を基にポストドラマ演劇関連教材と教授法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していたポストドラマ演劇の上演DVDの入手が、ドイツの劇場側の著作権保護によって不可能となったものが多かったため。 引き続き、劇場側と交渉し入手を試みる。またそれが不可能であった場合には、市販のDVDの購入あるいは人件費に充当する。
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