1)上演・戯曲データベースの作成と分類:ベルリン演劇祭の招待上演データ・ベース、Theater heute誌の演劇賞データ・ベースを作成し、ドラマ演劇からポストドラマ演劇、さらにドラマ演劇回帰への変遷史を明らかにした。 2)現地調査:計画を変更し、ミュンヘンでの演劇関係者(ミュンヘン・レジデンツ劇場、ミュンヘン大学演劇研究所、地区文化施設など)への聞き取り調査を実施した。その結果、2010年以降に演劇上演の面でも、演劇理論形成の面でも演劇テクストを重視する傾向が強まったことが確認できた。また日本のポストドラマ演劇の代表的演出家である岡田利規のミュンヘン室内劇場の初演準備に関する聞き取りも行った。 3) 理論形成:日本古典演劇の演劇論と現代の演劇理論の統合を試みた。特に、「依り代としての身体」という身体観の理論形成を図り、日本の古典演劇の身体観が現代日本演劇の身体観に継承されていることを証明しつつある。現代ドイツの演劇理論では俳優の身体を「記号としての身体」と「現象としての身体」に分け、後者の物質性を重視しているが、そうした身体観によって日本演劇の身体観を分析するのは不十分であり、「依り代としての身体」という身体観が必要であることを理論化しようと試みた。 4)教材と教授法の開発:映像編集ソフトを用いて字幕の付いた教材を作成した。編集した上演映像を加工した教材を、授業で使用しその効果を確認した。またミュンヘンで開催際した日本演劇の上映会に使用した。 5)学会での成果発表と報告集の作成:平成27年度の学会発表は行わなかったが、28年度に西洋比較演劇研究会(東京)、国際パフォーマンス学会(メルボルン)、岡田利規シンポジウム(トリア大学)、アジア・ゲルマにスト会議(ソウル)で研究発表予定である。
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