研究課題/領域番号 |
25370374
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中丸 禎子 東京理科大学, 理学部, 講師 (50609287)
|
研究分担者 |
川島 隆 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10456808)
加藤 敦子 都留文科大学, 文学部, 准教授 (40625448)
田中 琢三 お茶の水女子大学, その他部局等, 助教 (50610945)
兼岡 理恵 千葉大学, 文学部, 准教授 (70453735)
西岡 亜紀 お茶の水女子大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (70456276)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / 国内情報交換 / 情報収集 / 論文執筆 / 口頭発表 |
研究概要 |
本研究の目的は、アンデルセン『人魚姫』を軸に、異言語を扱う文学研究者同士が連携し、以下の2点を行うことである。 ①多言語の専門領域を持つ文学研究者による超領域的な研究。この成果を「人魚」をテーマとした論文集にまとめる。 ②専門研究の成果を教養教育に直接的に反映するモデルの提示。その成果として、『人魚姫』を扱った教養教育の教科書を刊行する。 ①に関しては、2点の具体的実績があった。1点目は、中丸禎子(研究代表者)のアンデルセン『人魚姫』に関する口頭発表(2013年9月)と、それに基づく論文の発表(2014年4月刊行予定)である。この実績を通じて、メンバーそれぞれが『人魚姫』に関する知見を深め、それぞれの専門研究との関連を考察することができた。また、デンマーク文学に関する論文が『ドイツ文学』に掲載されることにより、多くのドイツ文学者に北欧文学の視点・知識を提供することが期待できる。2点目は、川島隆(研究分担者)を中心に日本ハイジ児童文学研究会と共同で開催した一般公開の国際シンポジウム「ヨハンナ・シュピーリと『ハイジ』の世界」である。当シンポジウムでは、外国人招待講師および西岡亜紀(研究分担者)が講演を行った。児童文学と児童文学を原作としたアニメ作品は、文学受容の重要な一形態でありながら、従来の文学研究では看過されてきた。文学研究の立場から両者に光をあてる当シンポジウムは、当初想定していた言語の超領域化のみならず、分野の超領域化の萌芽である。 ②に関しては、2013年8月の研究会で田中琢三(研究分担者)が授業報告を行った。当授業で、田中は「文学と音楽」というテーマのもと、ドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』(筋には『人魚姫』と共通点が多い)を採りあげた。この発表を通じ、2014年秋に日本独文学会で、田中・川島・中丸が共同で行う授業報告の方向性が決定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は、研究会を3回開催し、その際の情報共有を通じて、①論文集の刊行と②教養教育の教科書の刊行に向けた準備が進みつつある。 ①に関しては、2013年9月の研究会で中丸が口頭発表を行い、この発表をもとに執筆した論文が『ドイツ文学』に掲載されることが決定した。論文集に掲載するための中丸の実績は、科研費取得前の論文「人魚姫のメタモルフォーゼ」(2013年3月)とあわせて2本となり、代表者個人の実績としては論文掲載のための必要数が確保された。今後はこの二つの論文を軸に論文集の方向性を更に具体的に検討し、代表者は執筆候補者の選定、執筆依頼や原稿の受領等の連絡および編集作業に労力の多くを注ぐことができる。また、研究分担者全員が、物品費を使用して「人魚」関連の図書を購入するなど、論文執筆に向け情報収集を行っている。こうした情報収集の結果は、今後の研究において実績として発表される予定である。 2014年3月のシンポジウムは、交付申請書作成時には予定していなかったものの、本研究の多角的な展開の可能性を開くものとなった。『ハイジ』は、『人魚姫』と同じく児童文学として広く人気を博す作品であり、シンポジウムでは、作家研究・社会的研究・日本での受容という多角的な観点が提示された。これらの視点は、『人魚姫』の超領域的研究にとって意義あるものとなった。 ②に関しては、2013年8月の研究会で田中が口頭発表を行った。この発表を通じ、中丸・川島・田中が、研究会での成果を教育の場に直接還元することを目的に、2014年度前期もしくは通年の授業で『人魚姫』を扱い、共同で学会発表を行うという方向性が具体化した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、2つの目標に向け、各メンバーが研究・教育・情報交換を行う。また、秋草俊一郎は、研究協力者から研究分担者に身分を変更し、①に関しては世界文学・比較文学の観点から、②に関しては教養教育に携わる立場から、情報共有・交換を行う。 2014年度の具体的な予定は、以下のとおりである。 ①に関しては、2014年8月、9月、12月、2015年3月に研究会を開催する。2014年12月の研究会は、日本児童文学会からの招待で、東京支部例会で中丸および研究分担者一名が口頭発表を行う。この発表により、本研究の成果を日本児童文学会メンバーと共有すると同時に、外部の論文執筆者の獲得に向けて新たな人脈を築く。『人魚姫』は、長く児童文学として親しまれてきたが、従来の各国文学研究では、児童文学への言及や児童文学研究との連携は希薄だった。本発表とは、当科研メンバーが児童文学研究の手法を学ぶ契機となる。 ②に関しては、中丸・川島・田中が、2014年度にアンデルセン『人魚姫』をテーマとした授業を行う。この成果を2014年10月の日本独文学会秋季研究発表会で発表する予定である(現在、発表申込書を作成中)。また、西岡は、紙芝居など、従来は教育の場で用いられることが少なかったメディアを、授業で積極的に活用している。西岡を中心に、教養教育のための教材についても情報交換を行い、2015年度以降に西岡が所属するいずれかの学会で共同発表を行う予定である。 今後の課題は、ヨーロッパ系文学研究者と日本文学研究者の連携の強化である。現時点ですでに、加藤敦子および兼岡理恵は、研究会での発表を行い、「異界」「伝承」などのテーマをヨーロッパ系メンバーと共有している。今後は、興味・関心の共有を実績の共有につなげるべく、研究会全体として東西比較の視点を取り入れ、ヨーロッパおよび日本における「異界」「伝承」の研究をさらに進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品および旅費に関して、交付申請書作成時には予測できない範囲での誤差が生じた。 2014年度は、京都府立大学で開催される日本独文学会秋季研究発表会で、中丸・川島・田中が共同発表を行い、他のメンバーも資料・情報提供者として参加予定である。当発表のための資料作成費及び旅費に次年度使用額を使用する予定である。
|