本研究は、①東欧系ユダヤ人作家、ロマン・ガリの研究を通して、②近代文学が求めた「個性」と「国民文学」を越えるものとして、国境・言語・宗教・民族・ジェンダーの「越境」と、既存のジャンル・作品・諸要素の「リミックス」を行う「世界文学」の可能性を探るものであった。 27年度は、①としては、ロマン・ガリが2度外交官として滞在したアメリカの現地調査をし、アメリカを舞台とする作品を研究し、②としては、4名の研究協力者を迎えて「世界文学」を模索するシンポジウムを開いた。 ①1.ロマン・ガリが国連のフランス代表として赴任したニューヨークを訪問し、国連内を見学した。2.ガリが別名で執筆した国連を舞台・テーマとする作品『鳩を抱いた男』を和訳した。(現在、出版社を探している)3.フランス公使として滞在したロサンゼルスに行き、ニューヨークを題材とした作品『白い犬』に登場する各所を現地調査した。3.彼が愛し、最重要作品とも言える自伝的作品『夜明けの約束』の語り手の居場所として設定したビッグ・サー海岸(全長90マイル)を現地調査した。 ②としては、1.日本女子大学文学部・文学研究科主催の座談会(『漂泊・彷徨・流転』をテーマとする)で、「文学に表現されるジプシー」についてなど、話をした。(座談会報告書を2016年3月に刊行)。2.シンポジウム「越境とリミックスの世界文学」を開催し、ロシア文学者の沼野恭子氏、アフリカ民族誌学者の真島一郎氏、カリブ海文学者の大辻都氏、台湾籍の日本語作家、温又柔氏をパネラーに迎えて、国家・言語・性・宗教・人種の「得「越境」と、翻訳、翻案、パロディ、コラージュ、ジャンル・文琢のリミックス(混淆)をめぐる現代文学の在り方と可能性を語り合った。(テープ起こしして小冊子作成予定)。
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