『秘中の秘』という,9世紀ペルシアの「王者の鑑」につき,そのラテン語版2種類,中世オック語版,中世フランス語版をそのほかのロマンス語ないし英語版と比較することにより,とくにその養生術の部分に注目して検討を加えた。オック語版を中心にしてまず,12-15世紀における根強い女性嫌厭思想をその「シュナミティスム」にかかわる部分より指摘した。また中世フランス語版における10に上るヴァージョンのうちの9-10番目にあたる写本について調査した。 そして,従来は『秘中の秘』につながるものとは認識されてこなかったウスタシュ・デシャンの一作品が,その養生術の部分を引き継ぎ集大成したものであると結論づけた。
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