戦後と同時代のドイツ文学で過去との取り組み方が質的に異なるのを明らかにするべく、1)時系列による編年体形式に変わって同一の空間に複数の時代を併存させるクロノトポスの技法が、現代では、バフチンが論じた小説にばかりではなく、詩においても認められること、2)伝記的自伝的な真実性を基準とするのではなく、歴史的事実と虚構を織り交ぜるオートフィクションの手法が顕著であること、3)絶対的な公準としていた過去から目を逸らさないという戦後ドイツ文学の道義的要請を徹底的に放棄して現在にフォーカスする傾向が強まっていることに注目し、H・ミュラー、W・ヒルビッヒ、K・レッグラらを研究し、その成果を国際学会で発表した。
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