研究課題/領域番号 |
25370381
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷 昌親 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90197517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 仏文学 / 美学 / 芸術諸学 / 比較思想史 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、シュルレアリスムの画家マックス・エルンストの作品における、とりわけアメリカ・インディアンの影響を調べたが、思っていた以上に資料の読み込みや整理に手間取り、まだ論文にまとめきることができていない。平成27年度にまとめる予定。 一方、シュルレアリスムの詩人・作家であり、民族誌の専門家でもあるミシェル・レリスの主著『ゲームの規則』4部作の最終巻Frele Bruitの翻訳を数年前からおこなってきたが、直線的ではない思考と複雑な構造の文がからむ書物に手こずったものの、ようやくひととおり訳し終わり、翻訳刊行のめどが立つところまで来た。それと同時に、シュルレアリスムにとって重要な概念であるle merveilleux 「驚異」をリアリズムとシュルレアリスムの結節点におき、それによって「詩」と「革命」の総合をめざそうというレリスの思想が、翻訳作業をとおしてより明解になりつつある。そうした「驚異」へのこだわりは、まさにレリス独特の異化作用の追求と言えよう。 シュルレアリスム関係では、この前衛運動の影響を受けた日本の三人の写真家、中山岩太、山本悍右、大辻清司についての仏語論文を準備中であり、いまは資料をほぼ読み終わり、まとめの段階に移ろうとしている。 こうしたシュルレアリスム関係の研究と並行して、視覚芸術関係の研究も継続中であり、平成26年度は、特にエリック・ロメールについて、彼が得意としたシリーズ物のひとつである「喜劇と格言」の第一話にあたる『飛行士の妻』を中心に調べ、彼が「足し算」の美学を追求しつつ、むしろ「不可視」の領域を映像で描こうとした姿勢を明らかにして、論文にまとめた。 これらの研究で浮き彫りにしようとしているのは、いずれも主体にとっての外をいかに作品に取り込むかの試みであり、異化作用をもたらす広義のエキゾティシズムの解明につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ある程度予想はしていたことだが、多岐にわたるテーマであるだけに、文献の読み込みに時間がかっていいる。また、レリスの『ゲームの規則』の翻訳が一筋縄ではいかず、多大な時間を要し、その分、他の研究項目に割く時間がなかなかとれずにいる。 また所属先での教育関係の会議や授業のための時間も増加しており、それも研究のための時間を減少させる原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
ミシェル・レリスの翻訳もようやく出口が見えてきた状況であるので、これを完成させるとともに、この際、彼にとってのエキゾティシズムの問題を考え直したい。 さらに、マックス・エルンストや日本の写真家をとおしてシュルレアリスムとエキゾティシズムの関係を多角的に見ていけるのではないかと考える。 一方、エリック・ロメールをはじめとする映画についての研究もさらに進め、上記の写真家についての研究とも合わせ、写真や映画の特性を活かしたかたちで生じてくる異化作用の働きを明らかにしていきたい。
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