18世紀フランスにおいて「習俗(moeurs )の概念は、近代社会の成立の根幹となる規範として機能し、啓蒙の基礎となる新たな人間観の基盤をなしていた。本研究課題においては啓蒙の世紀における習俗の変容について、「作法書」を中心的な研究資料として考察し、18世紀フランスにおいては作法書が立脚する宮廷文化が習俗を洗練させると同時に、習俗の堕落を導くという両義的な評価を受けていたことについて検討した。その結果、18世紀フランスにおいては、商業の発展を背景に宮廷で発展した女性的な文化に対する著しい嫌悪があらゆる形で発露したことが明らかになった。
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