研究課題/領域番号 |
25370385
|
研究機関 | 平安女学院大学 |
研究代表者 |
高橋 義人 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (70051852)
|
研究分担者 |
TRAUDEN Dieter 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), その他 (20535273)
久山 雄甫 神戸大学, その他の研究科, 講師 (70723378)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | デモノロジー / 原罪 / 堕天使 / 処女マリア / 魔女 / トリスタン / 自由意志 / 根本悪 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に引き続きDieter Trauden氏、久山雄甫氏と3人でのデモノロジー研究会を続けるとともに、科研の研究をもとにした『悪魔の神話学』と題する大部の著作をほぼ80%書き終えることができた。これは次の11章からなる。序文(西欧の影の精神史)、第1章(神の弟)、第2章(内在と超越)、第3章(堕天使という嘘)、第4章(原罪という嘘)、第5章(処女マリアという嘘)、第6章(魔女という嘘)、第7章(愛は悪魔よりも強し)、第8章自由意志論争、おわりに(カントの根本悪)、あとがき。第2章は、まだまったく手つかずである。(本書は岩波書店から刊行される予定) このうち平成26年度に書いたのは、第4章以下である(いまだ推敲中の章もいくつかあり)。 原罪説を最初に唱えたのは、一般に信じられているようにアウグスティヌスだと仮定して第4章を書き進めていたが、デモノロジー研究会で初期教父に関する数多の文献を扱ううちに、アウグスティヌス以前にテルトゥリアヌスがすでに原罪説を唱えていたことが分かり、第4章は現在、改稿中である。 第5章は、デモノロジー研究会で取り上げた『テオフィロスの芝居』の分析に当てられている。1926年に刊行されたK. Plenzat: Die Theophilusulegende(稀覯本)を入手でき、研究が捗った。他方、唯名論を扱った第6章は、その中核をなすオッカムの著作がきわめて難解で、この章をまとめるのに4か月を費やした。第8章を書くには、ルターとエラスムスの全集(ラテン語、ドイツ語、英訳)に当たる必要があり、平安女学院大学所蔵のものの他、京都大学や同志社大学に足しげく通った。「おわりに」はカントの「根本悪」説の批判に当てられているが、収集したカント研究書はいずれも「根本悪」説肯定の立場に立っており、カント批判を説得力あるものにするのにかなり苦労した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
『悪魔の神話学』は、400字原稿用紙で600枚以上の大著になるので、完成にはもっと時間がかかると思っていたが、1章を1ヶ月でまとめるという課題を自らに課したため、予想以上に捗った。むろん大半の章は1ヶ月ではとうていまとめきれなかったし、まとめられた章も、その後のデモノロジー研究会で新しい文献に触れ、大幅に改稿しなければならなくなったこともあったが。
|
今後の研究の推進方策 |
私の個人研究(単著)である『悪魔の神話学』は、平成27年度9月には脱稿する予定である。 またデモノロジー研究会の3人による共著で、ヨーロッパ中世のデモノロジーに関する共著を計画している。これは日本語で出版するつもりなので、研究分担者であるDieter Trauden氏の担当部分(ドイツ語)を誰かに邦訳してもらわなければならない。この共著の計画はまだまったく手つかずの状態にある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は配分額が少ないため、意図的に残した。
|
次年度使用額の使用計画 |
海外出張(ドイツ、12月)に用いる。
|