①平成26年度の研究実績を土台に、次のような成果を得た。:失われた漢代「鼙舞歌」(小ぶりの鼓を持って舞う舞踏の歌辞)について、まず、三国・魏の曹植による替え歌「鼙舞歌」五篇の冒頭「聖皇篇」が、本歌「章和二年中」の忠実な再現であることを論証し、これを起点として、曹植の置かれた境遇等を傍証としつつ、本歌である漢代「鼙舞歌」全般の内容的復元を図った。次に、漢代「鼙舞歌」が後漢王朝の宴席芸能であることを押さえた上で、そこに詠じられている歴史故事が、当時の宴席で行われていたと推定される詩歌や芸能の題材、及び当時の宴席風景を描いた画像石に隣接して描かれる歴史故事の図像とよく重なり合うことを検証し、このことを根拠として、「鼙舞歌」の歌辞全体が、当時の宴席芸能の実態を復元するための有力な研究材料たり得ることを指摘した。 ②期間中を通して行う研究として、次のような作業を継続した。:漢代画像石に見える歴史故事が、当時の宴席で行われていた語り物や演劇的芸能の描写である可能性を念頭に置きながら、画像石に描かれた歴史故事を文献上に探索した。中には、劉向『列女伝』や諸々の孝子伝のように、それが語られ演じられていたことを示唆する文体的特徴を見出し難いケースも多々あることを確認した。 ③上記の研究成果を基にして、次のような検討に着手した。:漢代の宴席で歴史故事が演じられていた可能性と、五言詩歌史上、「詠史詩」というジャンルが比較的早い段階で出現していることとの連関性に着目し、漢魏六朝時代の伝存する詩歌から、詠史詩に該当するものをピックアップした。
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