本研究は、漢代の墳墓の内壁に彫られた図像(画像石)を通して、当時の宴席で歴史故事を題材とする口承文芸が行われていたことを明らかにしたものである。主な論拠として、歴史故事を描く画像石が、しばしば宴の様子を活写する図像に隣接して現れること、それらの歴史故事が文献上に残されている場合、その文体の随所に、語られ演じられていた痕跡が認められること等を示した。加えて、宴席という場と歴史故事との親和性を示す事象として、漢代の宴席芸能である鼙舞の歌詞(楽府詩)に、画像石に頻見する歴史故事が詠われていることを指摘した。
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