研究課題/領域番号 |
25370406
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中川 諭 大東文化大学, 文学部, 教授 (20261555)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 三国志演義 / 版本 / 李卓吾先生批評三国志 / 書誌学 |
研究実績の概要 |
26年度の最大の成果は、アメリカ合衆国・イェール大学図書館に蔵される『李卓吾先生批評三国志』2種をはじめとする『三国志演義』の調査を行ったことである。その内の一つであるいわゆる「三槐堂本」は、従来「藜光楼本」と呼ばれていた版本(上海図書館・東京都立中央図書館など蔵)と同版であるが、版面がきわめてきれいで、初印本ではないものの、かなり早い段階の印刷であることが分かった。しかし封面などに「藜光楼」と記されてはおらず、従来「藜光楼本」と呼ばれていた版本の名称は再考する必要がある。また『李卓吾先生批評三国志真本』と題する本は、従来「宝翰楼本」と呼ばれてきたが、こちらも「宝翰楼」が刊行した明確な根拠が見当たらない。「真本」と題していることだけで「宝翰楼本」であるとする従来の見解は、大いに見直す必要がある。イェール大学蔵の「遺香堂本」は完本であり、その全体像はこれまであまり知られていなかったが、このたびその全体を調査することができた。そして「遺香堂本」は『李卓吾先生批評三国志』から派生した版本であることが確認できた。 日本国内では、東京都立中央図書館に蔵されるいわゆる「藜光楼本」と「遺香堂本」(いずれも残本)の原本を調査した。さらに山形県米沢市の市立米沢図書館にも赴いて、同館に蔵される『李卓吾先生批評三国志』を調査した。 これら各蔵書機関で直接原本を調査することで、次のような成果を上げることができた。すなわち、1,『李卓吾先生批評三国志』は大きく4つの系統に分けられること、2,各系統内における諸本の印刷の順序、3,『李卓吾先生批評三国志』に与えられていた従来の簡称は再検討を要すること、4,「遺香堂本」は、書名は単に「三国志」だが、『李卓吾先生表三国志』のいずれかの一本から派生して成立した版本であること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イェール大学図書館に赴いて同館所蔵の資料を直接調査したことにより、この研究はおおいに進展することができた。従来あまり知られていなかった資料を調査することで、『李卓吾先生表三国志』諸本についての様々な問題点を指摘し、明らかにすることができた。 国内においても東京都立中央図書館・市立米沢図書館に赴いて調査をした。しかし京都大学人文科学研究所に蔵される『李卓吾先生批評三国志』については、直接調査を行うことができていない。早急に調査を知る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まずできるだけ早い時期に京都大学人文科学研究所に赴いて、同館所蔵の『李卓吾先生批評三国志』の調査を行う。その調査結果を含めて、論文を執筆し、27年8月に中国・北京で開催される国際学会「明代文学思想与文学文献国際学術研討会」および「中国古代小説・戯曲文献曁数字化国際学術研討会」において発表する予定である。 また『李卓吾先生批評三国志』から派生して成立したと分かった「遺香堂本」についても、李卓吾本諸本との詳細な比較やイェール大学図書館蔵本・東京都立中央図書館蔵本・張青松氏個人蔵本どうしを比較調査して、「遺香堂本」についてもその性質・『三国志演義』初版本の中における位置づけなどの問題を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額では、15年3月末の市立米沢図書館への旅費を金額精算できないため、翌年度の所要額を待って、精算することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額に当たるものはすでに執行済みである。 15年度は、海外(中国)での学会に参加して成果発表を行うなど、当初の予定どおり予算を執行する。
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