ネパール国カトマンドゥ盆地の先住民ネワール族(チベット・ビルマ語系)が建てたマッラ王朝の15世紀~17世紀初頭に、外来言語ベンガル語(新期インド・アーリア語系)を用いて書かれた演劇写本群を研究した。これらはベンガル語で初めて散文の会話文を記録した重要な資料であり、従来のベンガル語文学史研究を刷新する潜在力を持つものである。また今日まで受け継がれるネパールの伝統芸能の様子を記録した初期の資料としても意義深い。そこには写本が書かれた時代に生きる人々の感性が如実に表現され、さらにそれが現代のネパール人の感性に直接的に繋がっていること、そしてそれは高度に発展した複雑な内容をもつこと、を明らかにした。
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