研究課題/領域番号 |
25370414
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平田 由美 大阪大学, 文学研究科, 教授 (60153326)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 占領と脱植民地化 / 革命と文学 / 東アジア |
研究概要 |
本課題は、植民地形成とその後の脱植民地主義に向かう世界的な状況を背景に、日本・朝鮮半島・台湾・中国大陸における文学活動を東アジア全体の文化現象として考察することを目的とする。具体的には、(1)領土的境界を越えて移動しながら書き続けた人々による重層的な空間における接触と交流の諸相を連続的な時間軸によって把握すること、(2)「東アジア文学圏」というパースペクティブから、近代化において先行したように見える日本文学とさまざまな地域の文学との関係をたんに「影響」関係にとどまらない、相互行為的な関係として捉え、(3)政治・社会運動などとの連帯を含む地域間の文化活動を追い、(4)国家や民族といった集団的帰属関係とは異なった多様な社会関係から生まれる文学の可能性を考える。 研究初年度にあたる2013年度は、国外(中国・台湾・韓国)の研究協力者との共同作業において、ロシア革命を淵源とする革命思想の空間的時間的な広がりを全体テーマとすること、そのための具体的なテクストの選定、調査分析の手法などについて議論した。国内では、日本帝国の崩壊後に生じた、植民地・占領地からの引揚げや戦地からの復員など「祖国」への帰還の物語、「残留」者としての在日朝鮮人の語りを分析した前プロジェクト(「「移動」の文学表象におけるジェンダーと言語」2010~12年度科学研究費補助金研究)の発展的研究として、占領期から1960年代の文学に視られる国際主義的な社会変革運動の側面に焦点化し、その原点として50年代の九州地方における文化活動に関する調査を行うこととした。現地調査については、連携研究者の間で日程が確保できなかったため、次年度に実施する方向で現在、予備調査を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内外の研究協力者・連携研究者との共同作業は進捗しているが、国内での研究のうち、現地調査の日程が調整できなかったため、年度計画全体から見てやや遅れが生じている部分がある。
|
今後の研究の推進方策 |
第二年度は、個別のテクスト分析などの作業を計画どおりに進める一方、国内の現地調査をできるだけ早期に行って、調査結果をプロジェクト・メンバー間で共有し議論するための研究会を開催する。研究計画じたいに変更はないが、国外の研究協力者たちがテーマとする東アジアの文学における革命思想の研究と、国内の研究協力者たちが進める戦後日本の社会変革的文学運動の研究とを密接に連携させることが課題である。これについては連携研究者が参加する海外での研究会もしくは海外研究者が参加する国内研究会を実施することで対応する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外研究協力者および国内連携研究者の都合により、初年度に行う予定であった九州地方での現地調査の日程が確保できなかったため、旅費として予定していた約60万円を次年度の調査費として使用することになった。 研究メンバーの日程調整が付き、第二年度である2014年7月に現地調査(佐世保米軍基地関連施設・井上光晴文学館・岡まさはる記念長崎平和資料館・大村入国管理センターなど)を行うことを決定し、現在、その準備作業を進めている。
|