研究課題/領域番号 |
25370415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小杉 世 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (40324834)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オセアニア / パプア・ニューギニア / ニュージーランド・オーストラリア / サモア / Lemi Ponifasio / Robert Barclay / 舞台芸術(ダンス・演劇) / 核実験・核文学 |
研究概要 |
ニュージーランドのサモア人舞台芸術家Lemi Ponifasioが率いるダンスカンパニーMAUのシドニー公演とワークショップを視察し、その成果を論文「この世の最期のダンス?― Lemi PonifasioのBirds with Skymirrorsと太平洋の核文学」で発表した。本稿では、キリバス出身の6人のダンサーとマオリ・サモア人ダンサーから構成されるPonifasioのBirds with Skymirrorsが、ダンスという抽象的思考性をもつ身体芸術の媒体を用いて、どのように環境や生の根源的なあり方についての思考の空間を形成しているかについて、オセアニアと日本の核や原発に関する文学なども視野におきながら論じた。また、セント・ルシアで開催された国際学会ACLALS (The Association for Commonwealth Literature and Language Studies) の第16回大会において、研究発表(Reading Japanese Nuclear Literature in Pacific Context)を行った。この発表は、震災後の原発問題をめぐる核と環境に関する日本人の現代詩人や知識人たちの意識の表明を根底に、小田実の『HIROSHIMA』その他の日本の原爆・原発文学やドキュメンタリー映画を、オーストラリアのアボリジニ作家をはじめとするオセアニアの核文学との関わりにおいて論じるものである。現地調査としては、パプア・ニューギニアにおいて独立前後に英語とトク・ピシンで書かれ上演/報道された演劇やラジオ・ドラマの文献調査を、ニュージーランドでは南太平洋系・アジア系演劇の視察とインタビュー、及びオセアニアの非核運動に関する視聴覚資料の調査を行った。マーシャル諸島の核実験を扱う小説(現在翻訳を検討中)を書いたハワイ在住の作家Robert Barclayとも現地でコンタクトをとることができた。調査研究と口頭発表、個別の論文発表は予定通りの成果を得たが、博士論文執筆の予定は遅れている。次年度以降にその点を補いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAUの公演は今までなかなか海外出張のタイミングが合わず、機会がなかったが、今年度は、5月と3月に前作の最後の海外公演と新作の最初の公演をそれぞれ視察することができた。ただし、3月の出張は申請時の予算が大幅にカットされているため、科研費で出費できず、運営交付金から出費した。また、セント・ルシアでの国際学会発表の帰路に乗継地点のハワイに立ち寄り、作家に会うなど、最小限の渡航費用で効率的に、計画を遂行することができた。カリブ海地方への渡航は高額につくため、予算の都合によっては、発表を辞退する予定でいたが、上記のような工夫によって、今年度に盛り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
全体としては、ほぼ予定通りに調査研究と研究成果発表の予定を遂行したが、教育とその他の業務から解放される時間のほとんどを海外渡航(国際学会発表を含む)にあてているため、計画の一部であった博士論文の執筆そのものは遅れている。H26年度は学内業務のため、海外渡航が制約される可能性があり、その分、博士論文の執筆の遅れを少しでも取り戻すように努め、H27年度末までにほぼ完成をめざしたい。
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