研究実績の概要 |
今年度の目的は、日系ペルー人作家の文学作品選集の出版企画をMurrup Ediciones (Lima)出版社へ提出することであった。選集はJose Watanabe, Doris Moromisato, Augusto Higa Oshiro, Fernando Iwasaki, Carlos Yushimito del Valleの作品の分析を含むものと考えていたが、それぞれの作品のテーマ、形状、作家の日系アイデンティティーに対する姿勢がさまざまであり、共通したある特定のテーマに焦点を置くことが難点であり、執筆終了の論文を無理に選手にまとめるのは相応しくないと考えた。他の手段を見つけるため日本、アメリカ、ペルーの図書館で日系ペルー人作家に関する資料を収集し、上記の作家に共通する点を探索したが、テーマを絞ることはできなかった。その一方、図書館で検索中に日系アルゼンチン作家による文学作品を取得することができた。特にAnna Kazumi Stahlの作品には日系文化の継承、アイデンティティーの衝突、移民に対する「よそ者」のレッテルに関するテーマが表されており、MoromisatoとHigaの作品に共通する点が多いことを発見した。Stahl氏と意見交換をするため、NYU,Asian/Pacific/American Instituteと共同開催した、Global Asia/Pacific Art Exchange (GAX)シンポジウムの東京での最終部(早稲田大学)へStahl氏を講演者として招聘した。Stahl氏とのシンポジウムの打ち合わせ、意見交換を通して、一つの国ペルーを超えて日系文学について考える必要があることを認識した。また、本来出版に向け企画を提出する予定であった選集に代わり、執筆した論文は査読付き学術誌に投稿し、1本は発表された。他の1本は発表が確定している。
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