研究課題/領域番号 |
25370420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
辻 吉祥 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 准教授 (50409588)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 優生学 / 大杉栄 / 丘浅次郎 |
研究概要 |
本研究は、〈近代〉日本における最も包括的かつ根底的な生物学的イデオロギーないし自然史的社会観である「社会進化論」もしくは「優生思想」と、その文学に与えた影響、相互浸透関係を明るみに出すことを眼目とし、そのための実証的基礎資料を国際的視野で集めつつ、新視点で研究を展開するものである。一年目の2013年度は、研究計画に従い、日本あるいはその比較対照に必要な地域における基礎資料の調査・収集がはかられ、またその解読が継続的かつ丹念に推し進められた。加えて年度末には、その成果のひとつとして、国際学会における研究発表一件、合衆国での招待講演が一件行なわれた。Superman and the “Degenerated” Bodies of Hansen’s Disease Patientsと題したその学会研究発表では、世紀転換期に始まる問題、すなわち思想化あるいはイデオロギー化された、進化/退化の身体の問題という視角から、幸徳秋水、大杉栄、安部磯雄、山川菊栄らの身体についてのヴィジョンが検証され、隔離・隠蔽されたハンセン病罹患者の身体の排除が、それ自身の問題ではなく、社会的/進化論的な夢の相関(ネガ)として成立している点について、文学作品の検討をも含めて議論された。参加した研究者との討議・交流があり、問題意識が共有されるとともに、各国研究者による研究会を次年度より行なうことにも進展した。会場でのいずれの試みも、合衆国で必ずしも進捗が十分でない研究領域についての発表との評価があり、論集として合衆国での出版計画が進行することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の課題とした明治・大正期の解放思想、文学の国際的な比較・分析、とりわけ欧米生物学の受容に関する日本的特質を確認する作業については、進捗が順調であり、とりわけ一年目の早い段階で、上記を踏まえた、アジア研究最大規模の国際学会での研究発表一件(3月、The Association for Asian Studies (AAS) 2014 Annual Conference)、招待講演一件が行なえた点は、大きな収穫であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の進行具合に特に問題も生じておらず、当初の研究計画通りに進めていくことに大きな変更はない。結果のための拙速と短絡を避けつつ、研究上何より重要な一次資料の収集と解読に、昨今の厳しい研究環境の中、時間をできるだけ割けるように努力、工夫しなければならない点も同様である。合衆国での国際学会研究発表の結果、あたらしく生まれた各国研究者が参加する超領域的な研究会においても、予期せぬ成果が期待できるようさらに努力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度の研究成果として行なった国際学会研究発表およびサラ・ローレンス大学での招待講演を含む渡米は、合衆国とタームが異なる事情のため、日本時間で年度をまたぐことが不可避であった。よって基金化された科研費に使用規則上許されている年度をまたぐ旅費の精算の仕組み(年度をまたいで出張した場合でも4月に一括して支出してよい)を利用した。 理由欄に記すように、すでに成果発表の実質が遂行済みである。2013年度の残額と2014年度予算を合算した形で、追ってすみやかに会計処理が行なわれる。
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