研究実績の概要 |
平成26年度の目標は、アイルランド語のcleft構文(強調構文)におけるcleft可能な句(強調され、前置される句)に関する調査であった。調査の結果、NP(名詞句)とPP(前置詞句)だけでなく、CP(補文化標識を伴う節)とIP(補文化標識を伴わない節)もcleft可能であることが分かった。この事実をきっかけに、さらに、以下のことも分かってきた。(i) アイルランド語では、IPが主語になりえ、cleftされること、(ii) 目的語の位置にある節からのwh句の抜き出しは可能である一方、主語の位置にある節からのwh句の抜き出しは不可能であること、(iii) 補文化標識go/gurを持つ一定の構造内部に出現する残余代名詞は、アイルランド語に顕著に見られる残余代名詞ストラテジーでは救済できないこと、(iv) wh句を先頭とするチェインパターン (aL, that, RP) (RP = 残余代名詞)が、主語の位置にある節からwh句を抜き出している例において可能であることである。これらの発見は、以下のことを示唆する。(i) アイルランド語の文法には、残余代名詞の出現に関して、アイルランド語に特有の条件を持っていること、(ii) アイルランド語においては、主語の位置は、適正統率される位置ではないこと、(iii) 人間言語は、IPが主語として機能することを許容し、補文化標識と述語(動詞と時制)の間に一致があるようであること、(iv) wh句を先頭とするチェインパターン (aL, that, RP)は、Maki and O Baoill (2011)が最初に可能であることを示唆したものであるが、移動を含む構文において、明らかに存在するチェインパターンであることである。
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