研究課題
本研究は、日韓語の文末連体構文(例:「~(する)計画(だ)。」)、文末名詞化構文(例:「~(する)の(だ)。」)について、言語類型論と語用論、文法化の観点から、両者の機能的共通性(連続性)と、相違点について分析した。具体的には、文末連体構文は主要部名詞が語彙的意味を有する名詞であり、文末名詞化構文は語彙的意味が希薄化した、あるいは殆どない機能語(例:ところ、の)であるという違いがある。前者の構文には主要部名詞が機能語化していないもの(例:ドア)と、語彙的意味を有しつつ機能語化した用法を有するもの(例:計画)がある。後者の構文で用いられる主要部名詞は語彙的意味が希薄化しているかあるいは殆ど語彙的意味を有しておらず、日本語学で「形式名詞」、韓国語学で「依存名詞」と呼ばれるものである。前者の構文のうち、機能語化していない一般の語彙的名詞を主要部とするものは、「レンコ、バスに乗る。閉まるドア(*だ)。」のようにコピュラが伴わないで文末に連体修飾節が直接生起し、語用論的に「ト書き」(坪本篤郎の指摘)のような臨場感を高めるために用いられる。一方、前者の構文で用いられる主要部名詞の中には語彙的意味を保ちつつ一部機能語化しつつある名詞(例:計画)もある。これらは文末でコピュラを伴って「首相は訪米する計画だ。」のように助動詞的に用いられるものがある。機能語化しつつある主要部名詞を含むこのような構文は、後者の「文末名詞化構文」(例:首相は訪米するところだった/のだ。)と機能的に連続しており、いずれも助動詞的な形式として、様々なモーダル、あるいはエビデンシャルな機能を果たしている。日本語においては、文末連体構文、文末名詞化構文ともに種類が豊富で、特に後者は機能拡張しているものが多い(例:の、こと、ところ、もの)。一方、韓国語は前者、後者の構文ともに日本語よりも機能的にもより限定されたものが多い。
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