• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

Origoと視点によるダイクシス理論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370430
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

瀧田 恵巳  大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70263332)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2018-03-31
キーワードher-とhin- / Origo / 視点 / フィクション / 一人称と三人称
研究概要

平成25年度は、まず研究実施計画に従い、her-とhin-(herauf-hinaufのようにherとhinが対立し、且つ共通の方向を示す語彙のペア)の具体的な用例の分析から開始した。引用文献としては、登場人物を中心に筋が展開するタイプの物語を選出したところ、三人称物語(登場人物が三人称に限られる物語)と一人称物語(語り手と同一とみなされる登場人物が現れる物語)との間には、文脈上および分布上違いがあることが判明した。
上記の結果を受け、Origoを取り入れた物語理論、Hamburger(1977):Die Logik der Dichtungを検討したところ、その論の問題点が明らかになった。Hamburgerは、語り手は語る機能に過ぎず、作中人物が語ると述べる。したがって三人称物語は「(作中人物である)三人称が語る文学」とみなされる。しかし作中人物は描写の対象であり、語り手はその語る内容に対し、一人称であるはずである。
このダイクシス上の矛盾を解消すべく、まず第一の研究論文において、Origoのみならず、視点を取り入れ、ダイクシスからみた物語構造を提示した。さらに第二の研究論文において、一人称物語のうち、特に自伝的要素が強いとされる文芸作品を対象にher-とhin-のデータを収集した。
現在のところ、her-とhin-は、フィクションの本質ともいえる現象で、過去形がその時間的意味を失うという「現前化」に適用されていることが判明している。またその実現に関して、一人称物語においては、Origoの客体化への準備段階が必要であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ダイクシスが本来、指示するものと指示対象との関係に基づくことは周知のことである。しかし物語理論が導入されたこの見解は、指示場の中心であるはずのOrigoが指示される指示対象となり、またOrigoは三人称として客体化されているほうが、ダイクシスにおいてはむしろ自然であることを暗示する。つまり、平成25年の研究によるOrigoの特徴は、心理学の分野においてはピアジェの発達心理学における「脱中心化」をまさに具現しているといえる。また物語において、「うれしい」などの感情形容詞などの人称制限が解消されるとされているが、むしろこれは逆で、フィクションにおいては、Origoは三人称の方が普通であることを、ダイクシスから見た物語構造により、説明することは、他分野への貢献が極めて高いことが予想される。ただし用例の収集とダイクシス理論の構築は、平成26年度も継続する必要がある。

今後の研究の推進方策

平成25年度の成果に基づき、her-とhin-による現前化とフィクションの人称について学術発表を行い、さらに知見を取り入れたうえで、データーを収集し、この結論を裏付けるとともに、従来のダイクシス理論をOrigoと視点の観点から再検討する。本研究の主眼であるher-とhin-の空間的用法に見られるOrigoと視点の関係に酷似する概念は,既に指摘されているが,Origoと視点によるメカニズムの分析には至っておらず,またその見解には偏りが見られる。この点に関して,さらに文献を調査・究明する。また知覚発達心理学の見地におけるOrigoと視点に関する実験結果やその関連文献の収集も合わせて行う。
物品費及び旅費はその文献の調査及び入手の支出に充てられる。

次年度の研究費の使用計画

25年度は、研究計画に即しデータ収集を始めた段階で、文献による更なる検討を要し、海外出張および謝金による研究活動が大幅に妨げられたため。
従来のデータ収集、および文献の検討に加え、海外出張および謝金による研究活動を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] ダイクシスから見た物語構造2014

    • 著者名/発表者名
      瀧田恵巳
    • 雑誌名

      言語文化研究

      巻: 40 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 一人称物語『緑のハインリヒ』におけるOrigoと視点について2014

    • 著者名/発表者名
      瀧田恵巳
    • 雑誌名

      言語文化共同研究プロジェクト2013時空と認知の言語学III

      巻: 言語文化共同研究プロジェクト2013 ページ: 未定

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi