研究課題/領域番号 |
25370438
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
荻原 稚佳子 明海大学, 外国語学部, 准教授 (10458482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 会話スタイル / 会話の連鎖 / 異文化コミュニケーション / 談話研究 / 相互行為の制度性 / 繰り返し / 言いさし |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語コミュニケーションにおける言いさしを含む連鎖の制度性を発見することにある。平成27年度は、日本語母語話者間の自由会話から抽出された「①質問ー②回答ー③繰り返し」の会話の連鎖について、やり取りのスタイルの特徴、つまり、会話スタイルの面から調査分析を行った。 調査では、日本語母語話者の会話で実際に「①質問ー②回答ー③繰り返し」の連鎖がどの程度見られ、どのような言語的特徴を伴って現れるのか、どのようなバリエーションがあるのかを検証した。その結果、ペアによる会話の77.8%に出現しており、「質問―応答」の隣接ペアにわざわざ③繰り返しをすることで会話のやり取りにリズムが生まれ、軽快で楽しそうな会話が行われていることが分かった。また、③繰り返しでは、②回答の全部、または一部を繰り返し、言いさしを含む会話の連鎖になっているという特徴も確認できた。 さらに、実際出現した「①質問ー②回答ー③繰り返し」のやり取りと、「①質問ー②回答」のみのやり取りの会話例8例を使って、アンケート調査を行った。その結果、日本語母語話者は83.1%が「①質問ー②回答ー③繰り返し」の連鎖のほうが楽しそうで盛り上がっていると感じると答え、自分自身も88%がこのタイプの会話スタイルでやり取りを行っていると認識していた。また、会話相手に対しても92%の人がこのタイプの会話スタイルを望んでいることが分かった。 それに対して、中国語母語話者は、「①質問ー②回答ー③繰り返し」の連鎖のほうが楽しそうな会話スタイルだと回答した人は53.2%に留まり、その差は日本語母語話者ほど顕著ではなかった。また、自分自身がそのような会話スタイルであると認識している人は64%で、相手にその会話スタイルを望む人も64%であり、必ずしも好感をもたれていないことがわかった。 韓国語母語話者についても、同様のアンケート調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度中に、韓国語母語話者へのアンケート調査についても分析を行い、研究をまとめる予定になっていたが、本務校における業務が多忙であったため、予定通り進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の通り研究を進めていく。 (1)韓国語母語話者へのアンケート調査の分析とまとめ(2)日本語コミュニケーションにおける言いさしを含む会話の連鎖と会話スタイルとの関係考察(3)これまでの研究結果から総合的な「言いさしを含む会話の連鎖」についての制度性と日本・中国・韓国の言語文化別捉え方の違いについてのまとめ その上で、以上の内容について論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国語母語話者向けのアンケート調査の分析・考察を行い、会話スタイルについてのまとめを論文としてまとめる。そのための研究費用と、これまでの研究成果をまとめて報告書とするための費用が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
分析作業と報告書作成費用として使用する計画である。
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