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2013 年度 実施状況報告書

依存・認可の関係性を基盤とする制約的音韻理論による日本語音節構造の実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370442
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東洋大学

研究代表者

高橋 豊美  東洋大学, 法学部, 教授 (00639825)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード音節 / 頭子音 / 制約性 / 音韻エレメント / 依存・認可 / 音韻理論
研究概要

本研究は、分岐韻を仮定しない日本語の音節構造の理論を展開し、その妥当性を実証的に示すとともに、理論的制約性に関するメタ理論的考察を行い、、依存・認可という関係性を基盤とする音韻理論の発展を目指すものである。平成25年度は、日本語の音節構造の記述およびそれに基づく実験計画の策定を予定していたが、最近のエレメント理論(Backley 2011)の展開から、本研究の当初に前提としていた理論的枠組み(Kaye, Lwenstamm & Vergnaud 1990, Harris 1994, Takahashi 2004)について制約性を高める修正の着想を得て、これを論文にまとめた。その概要は次のとおりである。
日本語の音節構造の記述について、分岐韻の存在と同様に理論的制約性の観点から議論の余地があると考えられるのは、頭子音の分岐の有無である。日本語の拗音は、例えば「級」の発音が英語のqueueと音声的に同一であることから、英語と同じように分岐頭子音を含むと広く考えられている。一方、英語でも/j/は頭子音ではなく韻に含まれて後方卓立二重母音(rising diphthong)を形成するという主張があり(cf. Anderson 1986)、日本語の拗音もこれと同様であると考えることもできる。しかし、本研究が提案するのは、分岐あるいは二重母音という概念が示唆する「時間的差異を伴う複数の要素」が音韻現象として存在しないという主張である。すなわち音響信号で/k/と/j/の連続として観察される現象は、音韻表示上では時間的差異のない音韻エレメントの集合にほかならない。
この修正により、分岐頭子音の音配列(/kj-/が広く観察される一方で/jk-/が存在しない、など)は、音韻事象ではなく、音声事象となるため、恣意的な音韻条件を仮定することが不要となり、理論的制約性を高めることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成25年度には3点の研究目的のうち第1点(全体の3分の1)まで進める予定であったが、「研究実績の概要」に記載したとおり、本研究の当初に前提としていた理論的枠組みに修正を加える必要が生じたため、計画が変更になった。しかしながら、この修正は、第3点の研究目的である「理論の制約性と説明的妥当性の追求に関するメタ理論的議論」に資するものであるだけでなく、新たな理論の展開が期待できるという点では、既存の理論的枠組みに基づく実証的研究という当初の目的よりも大きな成果につながり得るものと考える。この点について論じた成果は、論集に含まれて平成26年度中に刊行の予定である。以上のことから、第1点では予定していた達成度に届かなかったものの、当初の計画と前後することになるが第3点の研究目的の一部を先取りしたと考えることができるため、達成度は30%程度と評価する。

今後の研究の推進方策

平成25年度に着手した理論的枠組みの修正を進め、当初の目的を敷衍し、分岐韻のみならず分岐頭子音をも排除した日本語の音節構造分析に取り組む。この変更により、平成26年度に予定していた実験については、平成27年度に先送りすることになる公算が大きいと考える。そこで、現在は次のように研究計画を修正している。まず、上記の修正の概要については「現在までの達成度」に記載した論文にまとめたので、平成26年度中に修正を加えた理論的枠組みの提示を行う。この準備と平行して、最終年度までにまとまった成果を得ることを目標として、分岐頭子音を仮定する必要性が日本語のみならず普遍的に認められないという可能性を踏まえて頭子音の類型に関する調査を行い、分岐韻と分岐頭子音の両方を対象とするように実験計画の見直しを検討する。

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公開日: 2015-05-28  

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